2020 Fiscal Year Research-status Report
ハルビンのロシア革命:ロシア革命と東北アジアの在外ロシア世界
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17K03182
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 毅 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (70241495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 在外ロシア / ロシア革命 / ハルビン / 白系ロシア人 / 在外教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、帝政ロシアの東アジア進出拠点として形成され発展した都市ハルビンにおいて、1917年のロシア革命がどのように展開したのか、そしてその挫折により形成された在外ロシア世界がソヴィエト体制といかなる関係を構築したのか、という問題を同時代の史料に基づいて実証的に分析することを課題とした。本年度は、1917年のロシア革命を経験したハルビンのロシア人社会において、高等教育機関設立問題の展開とその変容を解明することを主要な課題とした。 この課題の遂行を通じて、以下のような諸点を明らかにすることができた。(1)1917年のロシア十月革命により成立したソヴィエト政権に反対する中東鉄道が中心となって管理運営した在ハルビン・ロシア人中等教育機関の卒業生は、さしあたりは反ソヴィエト勢力が支配するシベリア・極東の高等教育機関への進学が可能であり、ハルビンにおける独自の高等教育機関設立運動は順調には進展しなかった。(2)しかし1920年初頭にオムスクのコルチャーク政権が崩壊すると、多数のロシア難民がハルビンに流入し、ロシア人高等教育機関に対する需要も急速に高まった。それと同時に、シベリア・極東で高等教育機関に勤務したりオムスク政権で政権運営に関与したりした知識人もまたハルビンに流入した結果、ロシア人高等教育を担う人材の供給が可能となった。(3)こうして1920年にはソヴィエト政権から自立した高等教育機関の設立を目指す動きが再び活性化し、同時期にソヴィエト政権と対抗していた沿アムール臨時政府が設立した極東国立大学と連携しつつ、ハルビンで高等経済法科学校と工業専門学校の二つの専門教育機関が開設された。しかしこの段階では、両校ともに1894年のロシア帝国大学令の基準を満たす有資格教員を確保することができず、旧ロシア帝国の「大学」を称するまでにいましばらくの時間を要した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オンライン授業対応に思いのほか時間を割くことになり、また計画していた外国出張と国内調査出張を実施できなかったため、論文として成果を発表する段階にまで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果を踏まえて、1917年革命後の内戦期ハルビンの政治的・社会的状況についてさらに考察を深め、ハルビン革命を契機とする在外ロシア世界とソヴィエト体制との関係の変遷を考察する論文をまとめる作業を進める。この作業とあわせて、ハルビン革命後の混乱からハルビンにソ連勢力が進出進出して在外ロシア世界が変容する時期の歴史的展開にかかわる同時代史料を分析する作業を継続する。
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Causes of Carryover |
在外ロシア関係史料収集のためのチェコ共和国スラブ図書館への出張を計画したが、新型コロナウイルス流行によるチェコ共和国入国禁止措置継続のため出張を断念せざるを得ず、補助事業期間を延長こととなった。 次年度使用額は、マイクロフィルム資料分析のためのデータ化費用に充当する計画である。
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