2018 Fiscal Year Research-status Report
US Refugee Policy and Social Support for the Hungarian Refugee Students after the Revolution of 1956
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17K03183
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山本 明代 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (70363950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難民 / ハンガリー / 支援 / 女性 / 学生運動 / インドネシア / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は1956年のハンガリー革命と難民支援のなかの女性たちに着目した研究と革命後にアメリカ合衆国に渡った学生の動向の2つにテーマに取り組んだ。 ハンガリー革命の崩壊後、国際的な難民支援活動の中でハンガリー女性や少女たちはソ連の圧政に対して庇護・救出の対象としてクローズアップされた。そこで女性たち非力で敬虔なキリスト教徒家族の女性・娘として表象されたが、実際には最後まで持ちこたえた労働者評議会にも女性労働者が活動しており、死者を悼む「沈黙のデモ」の担い手は女性たちであった。またハンガリー難民ための実際の活動にハンガリー系の女性たちが難民への職の斡旋や通訳に活躍していた。 1956 年のハンガリー革命後の難民学生については、アメリカ合衆国に難民として受け入れられた学生たちが、亡命後のアメリカで形成した思想を日本を含むアジアへのツアーで発信し、各地の学生運動との関係を形成した点を明らかにした。難民学生たちは、アメリカ合衆国に到着後、アフリカの植民地解放運動、アメリカ国内の 人種差別に向き合い、これらと連帯するようになり、それまでのソ連批判が、反帝国主義・ 反植民地主義という新たなフレームで把握されるようになり、世界的な視野を獲得した。1957 年 5 月から 8 月までインドネシアや日本をはじめ東アジア 数カ国を歴訪して各国の学生団体と交流した。このうちインドネシアでは、当地の全学連と共に民主主義と民族独立のための闘争を通じて諸国民の自由と平等を強化する共同声明を発表した。これに対して日本では、全学連が会談を何度も拒絶したため、学生団体との連帯は実現しなかったが、日本各地で行った講演会を通してソ連批判、大国支配の弊害を訴えた。アメリカ政府の支援を受けたハンガリー難民学生であったが、このアジアツアーを通してアメリカ政府の意図とは異なる彼らの国境を越える連帯の思想を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果に基づき、「1956年のハンガリー革命と難民支援のなかの女性たち」と「1956 年のハンガリー革命後の難民学生による社会運動」と題する2つの研究発表を行うことができた。海外調査については、ハンガリーでの調査はできたが、アメリカ合衆国などの難民が渡った先での支援状況や難民の活動に関する調査は充分できなかったため、次年度に補いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ合衆国での難民支援の組織的な活動とハンガリー難民の動向に関する調査が今後の課題である。2回の研究報告の内容を論文にまとめ投稿する予定である。この研究テーマの成果全体を著書にする方策も探っていきたい。
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Causes of Carryover |
予定した海外調査が1回短期間しかできなかったため。2019年度に海外調査の不足を補いたい。
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Research Products
(3 results)