2017 Fiscal Year Research-status Report
初期中世ヨーロッパ社会における「威嚇」の作法・形態・機能に関する研究
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17K03186
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
菊地 重仁 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80712562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランク王国 / 紛争 / 歴史叙述 / 証書 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画の初年度にあたる本年は、研究代表者が従来主要な分析対象としてきた初期中世ヨーロッパの証書史料の調査をさらに進めることと並行して、年代記や君主の伝記などの歴史叙述史料から「威嚇」に関連する情報を抽出する作業を進めた。また初期中世ヨーロッパにおける威嚇、交渉、紛争などに関する研究文献の収集も積極的に進め、その分析整理に努めた。その過程で得られた史料分析結果(とりわけニタルドゥス『歴史』や『サン・ベルタン編年誌』、『フルダ編年誌』、およびルートヴィヒ敬虔帝の伝記2点など)を用いつつ、9世紀半ば頃の使者を通じたカロリング朝君主間の交渉や威嚇に関する英語論文をまとめ入稿した。本稿を収録した論文集はMartin GravelとJennifer R. Davisが編纂し、2018年末ないしは2019年にBrepols社から刊行される予定である(それゆえ以下の2017年度業績一覧には記載していない)。こうした文献史料の分析作業と並行して、初期中世ヨーロッパにおける「威嚇」のあり方とその認識をより多角的に捉えるため、安藤さやか博士(東京藝術大学美術学部芸術学科教育研究助手)に研究協力を依頼した。同氏から美術史学の立場から様々な所見をうかがい、討論を重ねることができた。また2月下旬にはベルリン自由大学のシュテファン・エスダース教授の下に滞在して討論、情報交換を行った他、ベルリン自由大学、ミュンヘン大学、モヌメンタ・ゲルマニアエ・ヒストリカなどの各研究図書館で資料の収集を行った。 なお本研究の副産物としての出版成果にも触れておきたい。「威嚇」の事例を調査する中で目に留まった、カロリング朝フランク王国初代国王ピピンの即位に至る過程での王家内での角逐・排除の様相は、個別の論考として公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
証書史料や叙述史料から「威嚇」に関連する情報を抽出する作業を進める中、視野を限定する形ではあるがその成果の一旦を活字化するに至っているため、計画初年度としては順調な滑り出しと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
史料・研究文献の収集・分析という基礎作業は次年度も継続するが、それと並び来年度は、(初年度末に研究打ち合わせを行った)ベルリン自由大学のシュテファン・エスダース教授との連携を強化し、「罰金」への注目を強めつつ研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
刊行情報が出てすぐに発注した書籍のうち、出版が遅れ年度内に刊行されなかったものが複数あったため、次年度使用額が生じてしまった。しかしこれは注文済みの書籍が届き次第、物品費として消費されるため、全体としての研究費使用計画に影響はない。
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[Book] 悪の歴史 西洋編・下2018
Author(s)
堀越孝一編著、菊地重仁 他21名
Total Pages
503(20-32)
Publisher
清水書院
ISBN
978-4-389-50067-2