2017 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦期、空爆標的地図にみる米英連合国の空爆戦略の転換
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17K03187
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
高田 馨里 大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (40438172)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第二次世界大戦 / 米英関係 / 空爆 / 軍事戦略 / 地図史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2014年4月1日から2017年3月31日まで行った基盤研究(C)「第二次世界大戦期、米英両国の世界地理認識の比較研究―地図史研究の方法論を用いて―」(研究課題領域番号26370870)を発展させたものである。前回の調査では、イギリス軍の夜間爆撃戦略に対して、アメリカ軍が白昼精密爆撃のために「斜角遠近法標的地図」を作成したプロセスを明らかにした。本研究は、実際にその地図がどのように用いられたのか、またヨーロッパ戦線でアメリカ軍が行っていた白昼精密爆撃戦略がいつ、どのような状況で修正されたのかを明らかにし、地域爆撃を行った対日爆撃戦略への転換点を探るものである。 夏季には、米国立公文書館ならびに連邦議会図書館で一次史料調査を行った。主に調査したのは、アメリカ陸軍航空軍史料、アメリカ陸軍省史料、そしてアメリカ陸軍航空軍司令官(Carl Spaatz, Ira Eaker, Henry Arnold)史料である。これらの調査を通じて、「斜角遠近法標的地図」が、イギリスの開発した標的地図を参照としたものであり、白昼精密爆撃用に誘導路が加えられたおおよその時期を明らかにすることができた。この地図にこそ、米英両国の対独空爆戦略の相違が明らかに示されているということができる。アメリカ軍司令官に「効率的」とみなされていた白昼精密爆撃戦略であったが、強固なドイツの防空システムの前に白昼精密爆撃作戦は、アメリカ軍に甚大な犠牲を強いることになった。この調査結果を、研究論文「プロエスティ・レーゲンスブルク・シュアインフルト―米軍白昼精密爆撃戦略の揺らぎ、1943年ヨーロッパ戦線―」としてまとめ、平成29年度末に大学紀要で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内における文献調査、海外史料調査のための事前オンライン調査ともに成果に結びついたといえる。平成29年度(2017年度)は、軍事的な空爆戦略に関連する文献のみならずヨーロッパにおける空襲を扱った社会史的文献を渉猟した。近年、空襲を受けたドイツの都市に関する研究の翻訳が出版されたため、空爆戦略の転換という研究課題に加えて、空爆が戦時下の民衆に与えた影響についても検証する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度における国内での研究成果発表について、日本における空襲の実態を調査し続けている「空襲・戦災を記録する会全国連絡会議」にて発表を行い、「研究成果を社会・国民に発信」したいと考えている。これにより日本史研究者や空襲調査を行う市民団体との交流を図りたい。さらに夏季に予定通りイギリスでの調査を行い、ヨーロッパ戦線からアジア・太平洋戦争への軸の転換プロセスについての研究を進める。また最終年度の海外学会での発表に備えて、12月にSociety for Historians of America Foreign Relationsの年次大会(2019年6月)での研究報告に申し込む予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度の海外出張日程の関係で予算よりも廉価な価格となった。平成30年度は海外出張とともに、国内における研究報告(愛媛大学)を予定しており、差額は愛媛大学でおこなわれる「空襲・戦災を記録する会全国連絡会議」での研究報告のための国内出張費として充当したい。
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