2017 Fiscal Year Research-status Report
近世ロシア帝国に生きた民族の軌跡と記憶についての研究
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17K03192
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
豊川 浩一 明治大学, 文学部, 専任教授 (30172208)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アイデンティティ形成 / バシキール人 / サラヴァト・ユラーエフ / 民族の記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、民族の記憶や意識がどのように歴史的に形成されていくのかを考察することである。とくにロシア連邦バシキール人のサラヴァト・ユラーエフの記憶に焦点を当てつつ、彼らがこの人物をめぐってどのように記憶してきたのかを探ることである。そうした状況を通して、バシキール人がいかにして民族意識を形成してきたかを明らかにしようとする研究である。 第1の実施計画としていた先年行われた国際学会での報告の英語論文化である。これは現在、投稿中である。第2のより研究の精度を高めるための方法についてである。これについては、学会ではなかったものの、2017年4月28日の多くの教員も参加する大学院授業文化継承学で「記憶すること、歴史を叙述すること―バシキール人のアイデンティティ形成―」というテーマでその概要を報告し、多くの参加者の興味を惹き、またたくさんの質問を受けた。第3の報告内容の検証についてである。2017年8月にはアルメニアへ出張し、20世紀初頭の民族浄化の歴史およびその記憶についてアルメン・ツァトゥーリアン教授より教授されるた。2018年3月にロシアへ出張を行ない、モスクワの国立図書館および歴史図書館、さらに古法文書館での資史料調査を行った。第4の外国人研究者との研究交流による研究の進展を図ることについてである。18世紀ロシア史の専門家リペツク大学ニコライ・ペトロヒンツェフ教授と話し合い様々な助言を受けた。またバシコルトスタン法制史の専門家からも18世紀バシコルトスタン史について示唆を受けた。さらに2016年に刊行した拙著『18世紀ロシアの「探検」と変容する空間認識』に対して『駿台史学』163号で、バシキール人の意識の問題を取り扱ったものとして、好意的な書評を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上でも述べたことの繰り返しも含まれるが、現在までの進捗状況は以下の通りである。 第1の計画としていた先年行われた国際学会での報告の英語論文化については、現在、投稿中である。第2の計画についてである。これについては、学会ではなかったものの、2017年4月28日の多くの教員も参加する大学院授業文化継承学で「記憶すること、歴史を叙述すること―バシキール人のアイデンティティ形成―」というテーマでその概要を報告し、多くの参加者の興味を惹きたくさんの質問を受けた。第3の報告内容の検証についてである。2017年8月にはアルメニアへ出張し、20世紀初頭の民族浄化の歴史についてアルメン・ツァトゥーリアン教授より教えを受けた。2018年3月にロシアへ出張を行ない、モスクワの国立図書館および歴史図書館、さらに古法文書館での資史料調査を行った。第4の外国人研究者との研究交流による研究の進展を図ることについては、18世紀ロシア史の専門家リペツク大学ニコライ・ペトロヒンツェフ教授と話し合い様々な助言をもらった。またバシコルトスタン法制史の専門家バシコルト大学アイトガン・アクマーノフ教授からも18世紀バシコルトスタン史について示唆を受けた。さらに2016年に刊行した拙著『18世紀ロシアの「探検」と変容する空間認識』に対して『駿台史学』163号で、バシキール人の意識の問題を取り扱ったものとして、好意的な書評を受けた。 以上の点から、2017年度の研究課題遂行予定について、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画については以下のような方法で行うものとする。 第1に、現在投稿してレヴューを受けている最中の論文に関して、これを今年度中に刊行する。目下、編集部から要請されている論文要旨などを作成中であり、これらを完成させて刊行までこぎつける予定である。第2に、ロシアの研究者を招聘し、研究者のみならず、大学院生との交流を計画している。昨年度招聘できなかったリペツク大学のニコライ・ペトロヒンツェフ教授を招いて学術交流を図りたい。その上で、バシコルトスタン大学歴史学部のアイトガン・アクマーノフ教授などとの交流を継続して行う予定である。加えて同バシコルトスタン大学の他学部の先生たちとの研究交流をも行いながら研究課題の遂行を図る予定である。第3に、国際学会で報告し、研究の進展状況についてレヴュ―を受ける。本年7月にストラスブールで開催されるThe Xth International Conferance of the Study Group of Eighteenth -Century Russiaで報告することが決まっている。報告を通して、参加者の意見を聞きながら研究の進展を図る。第4に、報告内容の再検討をはかるという目的から、2週間程度ロシア出張を行なう。ロシアの図書館(モスクワの国立図書館と歴史図書館)およびロシアの古文書館(モスクワの古法文書館、ペテルブルクの歴史文書館、ウファーの科学アカデミー学術センター)で資史料調査に努める。第5に、最終年度の研究報告書作成に向けた準備である。2年目の後半から報告書作成に取りかかるべく、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター所蔵の史料や文献について調査を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品費として計上していたロシア・バシキール史関係書籍について、注文していたにもかかわらず、届くのに時間がかかており、そのため、計上できなかった。
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Research Products
(2 results)