2017 Fiscal Year Research-status Report
Russian tea trade and global market: Analysis of accounting books
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17K03198
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森永 貴子 立命館大学, 文学部, 教授 (00466434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 茶 / 商人 / 露清貿易 / モスクワ / ロンドン / 漢口 / 会計文書 / 自由貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はロシアの文書館で直接史料調査を行うことができず、前年度までに収集したモスクワ商人ボトキン家の帳簿・手紙・領収書・手形の分析に注力した。その成果として、1850年代の茶貿易の危機を中心にモスクワ商人がロシア帝国及び茶貿易の政策転換にどのように対応したかについて分析し、研究雑誌に論文を投稿した。また同様の問題意識から、1850年代の茶貿易危機以前からのコネクションと、1860年代以降中国製茶業へ進出したロシア商人の活動の連続性について、中国東北師範大学(長春)で行われた国際シンポジウムで報告し、中国・モンゴルの研究者と情報交換する機会を持つことができた。 ロシアでの史料調査は断念したが、年度末にイギリス・ノッティンガム大学の文書セクションManuscript & Special Collectionsが所蔵する商人銀行家ブラント家の年報を調査し、ボトキン家帳簿史料の情報との比較分析を行うことができた。この調査により、19世紀ヨーロッパにまたがるロシアの茶商人(ドイツ系、イギリス系含む)とドイツ系イギリス商人の商取引ネットワークを具体的に示す情報を得られたことは大きな成果であった。この成果については、2018年4月に行われたケント大学・東京大学共催の共同ワークショップにて報告を行ない、今後の研究についての方向性を示すことができた。 また茶貿易の検討課題と併せ、ロシアでの喫茶文化定着についても研究雑誌に論文を投稿した。現在は手元にある史料を中心に分析を進めているが、これまでのデータ蓄積を基に19世紀のローカルなロシアの茶貿易から中国、日本、ヨーロッパ間のグローバルな流通拡大という実態を具体的に明らかにできつつあり、引き続き史料調査を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であるロシア、特にモスクワの文書館に所蔵されている会計帳簿の調査を行うことができなかったため、この点で調査がやや遅れている。ボトキン家の会計帳簿のうち、1830年代と1850年代のものはすでに一部収集しており、本年度はそれらを基にシンポジウム報告と論文の投稿を行なうことができた。しかし1860年代以降については収集できていない史料が多数あり、手元の史料の分析が中心となった。 一方イギリスにおける調査では、間接的史料ながらドイツ系イギリス商人ブラントの年報史料を調査する機会があり、ロシア商人とドイツ系商人の関係について具体的な見取り図を把握することができた。ボトキン文書調査では、ロシア帝国内の茶貿易ネットワークを把握することができるものの、ヨーロッパとの具体的なコネクションについては曖昧な点が多くあった。この点は一部先行研究の論文でしか触れられてこなかった問題であり、ブラント年報の調査によって茶貿易を通じたユーラシア大陸のグローバル流通という展望が見えてきたことは本年度の大きな成果の一つである。従って当初の目的から方向性が少しずれてはいるが、概ね調査が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きロシアの会計帳簿の調査を行いたいと考えているが、2018年度ではなく2019年度に行う予定である。 2018年度の目標は、これまでの史料・文献の研究蓄積を基に、ロシアの茶貿易に関するモノグラフを執筆することである。これについてはすでに出版社の叢書として企画が決まっており、これまで日本でほとんど知られていなかった事実について新たな知見を含め、グローバル・ヒストリーの研究成果として刊行予定である。また日本国内だけではなく、海外で出版予定の論文集への寄稿(12月)、海外の大学でのワークショップ参加(3月)を予定している。このように2018年度は研究成果発信を中心に活動する予定であるが、これは2019年度に行うロシアでの史料収集につなげるための準備と考えている。特にロシアでの研究成果発信のために2019年度の史料調査は必要不可欠であるので、スケジュールを調整して行いたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の一つは、ロシアの文書館での史料調査を行なえなかったことが大きい。しかし年度末にイギリスでの史料調査を行なったため、次年度使用額は比較的少なく抑えられた。 次年度においては研究成果発信のために成果の英文翻訳に多額の費用がかかると予想される。2018年度は4月に国際ワークショップで発表し、年度末までにドイツの出版社から刊行される論文の校正が必要となる。また2019年3月にプリンストン大学においてワークショップを行うことも決定している。これらの研究活動のための費用に次年度使用額を有効活用する予定である。
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Research Products
(4 results)