2018 Fiscal Year Research-status Report
Russian tea trade and global market: Analysis of accounting books
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17K03198
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森永 貴子 立命館大学, 文学部, 教授 (00466434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 茶 / 商人 / 露清貿易 / モスクワ / ロンドン / 漢口 / 会計文書 / 自由貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究発表、論文執筆を中心に、これまで整理した研究テーマの情報発信を行なった。 2018年度4月に東京大学東洋文化研究所で行われた国際ワークショップでは、中国におけるロシア商人の製茶業進出について、キャフタとの関係を軸に"Local tea trade against global free trade"と題して発表した。2019年3月にプリンストン大学で行われたグローバル・ヒストリー・ワークショップでは、上記の発表をさらに発展させ、キャフタのローカル商人とロシア茶貿易市場のグローバル化の問題を比較考察した"Challenging Capitalism and International Market"の発表を行なった。この研究発表により、これまで研究者を含めて個別に研究されてきたロシアの茶貿易業者の活動史をより広い視点で結び付けて提示することができ、ロシア国内のローカル商人の競争関係とグローバルな茶貿易市場の接続の具体像を示せたと考える。本年度の科研費予算の大部分はこの国際発信のために費やした。 また、19世紀―20世紀初頭の帝政ロシア時代の茶消費増加の問題について、社会運動、文化的変化の問題から考察し、「ロシア帝政末期の茶と社会運動」と題し論文を発表した。論文とは別に、茶貿易業者の先駆に当たる毛皮業者の問題について「毛皮が結ぶ太平洋世界」と題する論稿をシリーズ本の章の一つとして2018年9月に刊行した。同論稿は北太平洋貿易とユーラシア大陸、アメリカ大陸を含む有機的貿易関係の全体像を示すものとして茶貿易史に関連している。 本年度は以上のような情報発信が中心で、ロシアのアーカイブ史料の調査に時間を割くことができなかった。2019年度はアーカイブ調査を優先に行い、刊行予定のロシア茶貿易史の執筆を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はロシアにおけるアーカイブ史料調査の時間を全く取れなかったことが大きく影響しており、この点で自身の満足いく成果とは言えない。このようなことになった理由として、①国際ワークショップにおける情報発信のため英語の翻訳、ネイティブ・チェックなどに費用が掛かり、特にロシアにおけるアーカイブ史料調査のための費用を残すことができなかったこと、②所属機関における校務などにより、史料調査のための海外渡航時間を取ることができなかった、の2点がある。①は想定外の費用がかかり、他からの資金調達を含めた予算見直しが必要であるというのが反省点である。また②の点で本年度は調査時間をもう少し割くことが可能と予想されるので、実現するよう、調査日程計画を考えていく。 調査についてはやや遅れているものの、一方で、国際ワークショップにおける情報発信を積極的に行ったことで、様々な分野の研究者と情報交換を行う機会があった。特に2019年3月にプリンストン大学で行ったワークショップでは、グローバル・ヒストリーの歴史家であるJ.Adeleman, S.Kotkin, E.Pravirovaなど、第一線の研究者たちの意見を聞き、議論を積極的に行うことができた。国内研究者たちとも様々な意見交換を行なうことができ、今後「ロシアの茶貿易」という本科研の研究テーマを深化させ、相対化する上で非常に参考になった。この点で本年度はテーマの全体像を構築するための交流と議論が中心であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は資料調査の時間確保が非常に困難であったため、まずスケジュールの見直しを第1にしつつ、成果の発表を行っていく。しかしアーカイブ史料調査に取れる時間が限られることも予想されるため、研究のために以下のことを計画している。 ①関心のあるロシアのアーカイブ史料、特にロシア国立歴史博物館手稿課(ОПИ ГИМ)所蔵のボトキン家の帳簿史料の調査が第1の目標である。 ②これまでにも収集・整理した膨大なアーカイブ史料があり、新たに得た情報との比較検討を行なって積極的に活用する作業を行なう。 ③国際ワークショップで行った研究報告はまだ英語論文として刊行していないため、その情報発信を行う。これについてはドイツの出版社から合同で英語論文集の刊行計画があり、投稿を検討している。 ④本科研の研究テーマは、他の科研の一環で世界史叢書のモノグラフィーとして刊行することを計画しており、そのための準備を進めている。ロシアにおける史料調査で不十分な点もあるが、本テーマそのものがロシアと中国、中央アジア、コーカサス地域、黒海沿岸地域、バルト海地域という非常に広範囲の地域との接続、ローカル貿易と関りがあり、全てを論じることは困難である。そのため、これまでに収集したアーカイブ情報、データの整理を行なうことも「世界史/グローバル・ヒストリー」の新たな視点と議論を提供する上で大きな意義がある。そのため、2019年度時点での成果を踏まえてモノグラフィーを刊行する計画である。
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Causes of Carryover |
2019年3月にプリンストン大学の国際ワークショップ(3/25-28)に参加し、報告のためのドラフトの翻訳、パワーポイントのネイティブ・チェックを翻訳会社に依頼した。しかし、翻訳の仕上がり、ワークショップの日程が年度末ぎりぎりの時期であったため、今回は翻訳にかかった費用を次年度予算に持ち越し、2018年度予算の残りと併せて賄うことになった。
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