2017 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦前のハプスブルク君主国における国家機能と住民統合
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17K03199
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
桐生 裕子 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (10572779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハプスブルク君主国 / ボヘミア / 農村 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、20世紀初頭から第一次世界大戦までの時期を対象に、ハプスブルク君主国による社会・経済問題への取り組み、それに対する住民の評価を検討することを通じて、従来まで明らかにされてこなかった国家と住民との関係を明らかにすることにある。本研究では具体的な考察の対象として、ボヘミアの農業住民を取り上げる。研究初年度である平成29年度は主に以下の作業を行った。 (1)研究史の整理と問題点の抽出 ハプスブルク君主国史の最新の通史であるP.M.Judson, The Habsburg Empire : A New History(The Belknap Press of Harvard University Press, 2016)および関連する文献を検討した。そして、20世紀初頭以降の君主国の社会・経済問題にかんする研究が近年も進んでおらず、また当該期を扱ったわずかな研究も、ケルバーの行政改革案など特定の改革案の表層的な検討にとどまっていることなどが明らかとなった。以上の成果の一部は、上記のジャドソンの著書の書評というかたちで『東欧史研究』に掲載した。 (2)ボヘミアの農業住民に関連する同時代史料の収集 ボヘミアの農業住民の経済・社会問題の認識、彼らの要求内容を検討するため、夏にウィーンとプラハにおいて史料調査と史料収集を行った。プラハでは、農業審議会チェコ・セクション、およびドイツ・セクションの定期刊行物を中心に史料収集を行い、現在その分析を進めている。また文書史料については、ウィーンの国立文書館の農務省文書、プラハの国民文書館の史料状況を確認し、来年度以降の本格的な史料収集の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、最新の通史などを踏まえて現在の研究状況を整理し、書評論文としてまとめることができた。夏の史料調査により、ボヘミアの農業組織の定期刊行物の史料を閲覧・収集するとともに、ウィーンとプラハの文書館に所蔵されている史料上の状況が確認できたため、来年度以降の史料調査を含む研究計画をより具体化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に収集した農業審議会チェコ・セクション、およびドイツ・セクションの定期刊行物の分析を進め、ボヘミアの農業住民の経済・社会問題の認識、彼らの要求内容、国家の農業政策に対する評価を明らかにしてゆく。平成31年度にはさらに農業審議会の文書史料、メンバーの著作など、新たな史料も加えて上記の問題についての考察を深め、その成果を発表してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
購入を予定した書籍の刊行が遅延したことなどにより、書籍購入の支出が予定よりも少なくなったこと、また予定していた英文校閲の時期がずれ、人件費の支出が少なくなったことにより、次年度使用額が生じた。次年度に持ち越された助成金は、前年度計画していた書籍の購入、および英文校閲などに使用する予定である。
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