2018 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦前のハプスブルク君主国における国家機能と住民統合
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17K03199
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
桐生 裕子 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (10572779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハプスブルク君主国 / ボヘミア / 農業政策 / 中欧 / 社会問題 / 統治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、20世紀初頭から第一次世界大戦までの時期を対象に、ハプスブルク君主国による社会・経済問題への取り組み、それに対する住民の評価を検討することを通じて、従来まで明らかにされてこなかった国家と住民との関係を明らかにすることにある。本研究では具体的な考察の対象として、ボヘミアの農業住民を取り上げる。平成30年度は、主に以下の作業を行った。 1)ハプスブルク君主国の農業政策の検討 世紀転換期以降の君主国の農業政策においては、農業住民の組織化と協同組合活動の推進がとりわけ大きな課題とみなされていた。そこで本年度は、世紀転換期に展開された加入義務制の農業組織をめぐる議論に注目し、政府と農業住民のそれぞれが農業問題の解決のためにどのような組織が必要であると考えていたか、という問題について検討した。その結果、政府のみならず、農業住民も農村が抱える問題を解決するためには、政府や国家の政策がより大きな役割を果たすべきであると考えていたことも明らかとなった。この成果の一部は、雑誌論文として『東欧史研究』に掲載した。 2)ボヘミアの農業住民による国家の社会・経済問題への取り組みへの評価、および君主国に対する評価の検討 ボヘミアの農業住民が国家の社会・経済問題への取り組みをいかに評価していたか、さらに君主国自体をいかに評価していたかについて検討を進めるため、農業審議会チェコ・セクション、およびドイツ・セクションを中心に、ボヘミアの農業組織の史料の収集を行い、現在その分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、ハプスブルク君主国の農業政策の検討をすすめる過程で、世紀転換期の農業組織をめぐる議論について、論文を発表することができた。また平成30年度は在外研究のため、史料調査のスケジュールは当初の予定から変更したが、ウィーンやプラハの文書館・図書館において、ウィーン農務省・ボヘミア総督府・ボヘミアの農業組織の史料をより効率的に収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の令和元年には、平成30年度に収集した農業審議会チェコ・セクション、およびドイツ・セクションを中心に、ボヘミアの農業組織の史料の分析を進め、ボヘミアの農業住民が国家の社会・経済問題への取り組みをいかに評価していたか、また君主国自体をいかに評価していたかを明らかにすることに努める。同時に、前年度までの研究成果に適宜新たな史料も加えて考察をさらに深めながら、3年間の研究成果をまとめてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は在外研究のため、史料調査・打ち合わせのための出張旅費が、当初予定していたものから大幅に少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度に持ち越した助成金は、研究成果を発表するための国際学会参加のための旅費、および外国語での論文執筆の際の校閲費にあてる予定である。
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