2022 Fiscal Year Annual Research Report
The state-population relationship in the Habsburg Monarchy before the World War I
Project/Area Number |
17K03199
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
桐生 裕子 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (10572779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハプスブルク君主国 / 中欧 / 東欧 / ボヘミア / 農業 / 行政改革 / 行政制度 / 経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初頭から第一次世界大戦までの時期を対象に、ハプスブルク君主国による社会・経済問題への取り組み、それに対する住民の評価を検討することを通じて、従来まで明らかにされてこなかった国家と住民との関係を明らかにすることを当初課題としていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、本研究課題を予定通り進めるために必要なヨーロッパでの史料調査を遂行することができなくなった。そのため2021年度以降は、これまでの研究の途中で入手できた第一次世界大戦中の統治にかかわる史料の分析に着手し、本年度も第一次世界大戦中の君主国の経済問題への取り組みと、住民の反応を明らかにするための作業を進めた。本年度は、第一次世界大戦中の戦時経済体制に直接関与した官僚・閣僚等により、戦時経済体制の研究および回想を分析した。 本年度、および研究期間全体を通して、第一次世界大戦前から、第一次世界大戦中の君主国の社会・経済問題への取り組みと、それに対する住民の反応を検討した結果、以下の点が明らかになった。1)大戦前から、君主国は社会・経済問題を解決するために、住民の組織化、住民の参加する諸機関を国家の制度に取り込むことを目指したが、こうした君主国の方針は大戦の勃発によって変化したわけではなく、むしろ大戦により促進された。2)大戦勃発後、国家の機能が徐々に拡大してゆくなかで、住民は国家機能の拡大を自らに有利に利用するために、国家の取り組みに積極的にかかわってゆこうとしていた。従来の研究は、20世紀初頭以降、とりわけ大戦勃発以降、国家と住民の対立が深化したことを強調してきたが、本研究の成果はこうした見解を大きく修正するものであるといえる。
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