2019 Fiscal Year Research-status Report
Empirical study of common people's beliefs in Tohoku district
Project/Area Number |
17K03205
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
荒木 志伸 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (10326754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磨崖供養碑 / 立石寺 / 石造文化財 / 屋号 / 霊場 / 山寺 / 弥陀洞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年8月31日(土)~9月2日(月)、日本山岳修験学会・第40回山寺立石寺学術大会を山形大学で開催した。そこで本研究の成果について発信すると共に、多くの有益な情報を得ることができた。初日のシンポジウムでは、「山寺の石造文化財」と題して、2019年8月段階までに確定した石造文化財データの分析結果と解釈について発表した。特に、立石寺の石造文化財の特色をより顕著にするため、山麓の天童市域や他霊場の墓石データ等と比較検討し、その相違性に関する見解を示した。さらに、2日目の個別発表の場では、立石寺中興とされる円海や、古代、中世からの立石寺の変遷画期における現状での問題点、近世期に類似の様相を有する天台宗霊場の事例など、貴重な所見を得ることができた。これらの発表者との意見交換によって得られた知見や視点を、今後の研究に積極的に取り入れていきたい。 また、磨崖供養碑の再調査を実施し、立石寺の石造文化財の建立者層やその背景にせまるデータを得ることができた。調査機材の進化等により、山内の各所の石造文化財に関して、新たに銘文が解読できた事例が多くある。磨崖供養碑は、石造文化財出現期に属する重要資料であることがわかっている。そこで、2006年に調査した弥陀洞地区約80基の磨崖供養碑について、LED懐中電灯を使用した銘文解読を試みた。その結果、従来判読不可能であった銘文について、かなり解読できるようになった。その内容には、石造文化財の建立者層に関わる内容も含まれている。例えば1例ながら施主名として「市村屋」と刻まれたものは、立石寺山内で初の確認となる屋号が刻まれた事例である。新たに得られた情報を加え、今後分析を進めていきたい。なお、岩場の下部に刻まれる磨崖供養碑は、降雪の影響をはじめとする冬季の環境による劣化が深刻であることも判明し、今後の課題として浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の報告や石造文化財データの解釈につながる重要な知見を得る機会にも恵まれ、研究の集大成に近付いており、おおむね順調に進展している状況といえる。今後は、他霊場との比較検討やデータの分析をすすめ、成果の公開を目指していきたい。 一方で、調査予定としていた奥の院地区の石造文化財調査については、その安全性から調査を見送ることとなり、次年度の課題として残された状態にある。また、最終成果を発表するため、文献調査を実施する予定であったが、これも十分にできていない部分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の公開を目指しデータ入力作業をおこなうと共に、霊場・立石寺の総合解釈を試みていく。石造文化財データは、将来的に項目検索が可能な形式を視野にいれつつ、まずエクセルデータとして入力する。また、他霊場との比較検討やデータの解釈に必要な文献調査を合わせて実施したい。 立石寺内での未調査となっている奥の院地区の石造文化財に関しては、その立入の安全性はもちろん、コロナの影響など十分留意しながら、慎重に研究をすすめていく。その時期や方法に関しては、立石寺や関連機関とも密に連絡をとりながら検討したい。
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Causes of Carryover |
奥の院地区の石造文化財の調査を予定していたが、その立ち入りにおいて危険性が生じたため、調査における安全が確保される状況を待つことにした。 次年度使用額については、現地調査のためのアルバイト雇用とデータ入力のための謝金、霊場・立石寺を解釈するための文献調査等にあてる予定である。
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