2018 Fiscal Year Research-status Report
The function and significance of mortuary rituals in the development of social complexity and early state formation
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17K03211
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝口 孝司 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80264109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 京子 (石川京子) 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (80617879)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 葬送儀礼 / 親族組織 / 複雑化 / 国家形成 / 日本 / ブリテン島 / 黄河中流域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本列島西半部・ブリテン島・中国黄河中流域の新石器時代から国家形成期の葬送儀礼関連資料を対象として、これに投影された親族組織・ 社会関係・社会戦略の復元をおこない、その成果を国家形成過程諸段階の社会の構造的特質と比較対比することを通じて、葬送儀礼の国家形成過程への関与と貢献の具体相を解明することである。本年度研究実績は下記の通りである。 ブリテン島:新石器時代~青銅器時代については、1) 父系に傾いた双系的継承シス テム(傍系親族と婚出者が二次葬被葬者)であるか、2) より広い出自集団からのジェンダーと年齢に基づくランダムな被葬者選択であるかの判断は困難なものの、前代新石器時代と比較して、被葬者個々人の社会的属性の表示を社会戦略として強く打ち出した点が初源的な威信財システムとの関連とともに明らかにされた。 中国黄河中流域:複雑首長制/初期国家段階と想定することが可能な商王朝、殷墟西北岡墓地の形成過程精密復元により解明された「葬送戦略」諸種と、各王の治世に該当する時期の環境情報との相関性の検討を行い、葬送戦略の選択に、同時代の環境・社会状況が考慮されていることを明らかにした(殷墟発掘90周年国際研究集会にて報告)。 日本列島西半部:地域的葬送習俗データにその他情報を加味したネットワーク分析の結果に、弥生時代後期から古墳時代初頭にかけての土器を中心とする物質文化アイテムの動態を相関させることにより、近畿地方を中心とする地域間関係の成層化傾向の発現の具体的メカニズムについてモデル化した。 このように、本年度研究は、特記すべき大きな成果三点を上げつつ、全体として概ね順調に進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた:a)埋葬プロセス、墓地・墳墓構造の変容過程の復元、b)親族構造・組織の変容過程の復元につき、ブリテン島新石器時代~青銅器時代 については、資料状況の限定から1) 父系に傾いた双系的継承シス テム(傍系親族と婚出者が二次葬被葬者)であるか、2) より広い出自集団からのジェンダーと年齢に基づくランダムな被葬者選択であるかの判断は困難なことが判明したが、前代新石器時代と比較して、被葬者個々人の社会的属性の表示を社会戦略として強く打ち出した点が初源的な威信財システムとの関連とともに明らかにされた。また、中国商王朝期については、殷墟西北岡墓地の形成過程精密復元結果を同時代の既存の環境復元成果や青銅器生産システムと比較することにより、「葬送戦略」の選択の具体的メカニズムについてアプローチすることができた(殷墟発掘90周年国際研究集会にて報告)。また、日 本列島データについては、地域的葬送習俗データにその他情報を加味したネットワーク分析を、土器を中心とする物質文化の様相の時間的空間的変動と相関させることにより、近畿地方を中心とするネットワーク形成と地域間関係の成層化の具体的メカニズムについてモデル化することができた。このように、全体として計画は概ね順調に進展しているが、ブリテン島における親族関係分析の予想事情の困難さから 上記の評価となった。しかし、中国関連データの予想以上のポテンシャルが昨年度に続いて追認されたので、中国関連データを主軸として最終的な結果収束とモデル形成・提示の段階に入りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記評価の通り、中国関連データにつき、昨年度明らかにした「兄弟間の競争がいわゆるfactional competitionの様相を呈し、それが葬送戦略 や儀礼の様相自体に明瞭に反映されている可能性」、これに加えて、そこにさらに、同時代の気候環境や社会的様相が色濃く反映していることが明らかにされた。このことは、社会の複雑性の確立過程において、<王>の身体(遺骸)を象徴的に動員して行われる葬送儀礼が、社会状況へのエリート層の対応の中核をなすことを示している。また、このような様相が出来した背景として、ブリテン島で明らかとなった初源的威信財システムと葬送行為における<個人>の社会的諸属性の象徴的動員との相関性があげられることが明らかとなったことは大きい。すなわち社会的コミュニケーションの最大領域の拡大がもたらした外部との接触が、死者の<共同体メンバー>としての取り扱いから<個人=象徴的財>として取り扱いへの変容を促したことが、国際比較研究にて明らかにされつつあるからである。最終年度の来年度は、このような視点を日本列島資料において検証し、葬送儀礼の国家形成過程への関与と貢献の具体相を解明する。
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Causes of Carryover |
関連書籍購入費用を見越していたが、研究計画全体の中での中国黄河流域資料の重要性が著しく増加したため、計画していなかった資料調査を計画する必要が生じ、関連図書購入を次年度に回したため。
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