2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03216
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
堤 隆 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (70593953)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神子柴系石器群 / 石材原産地 / 遺跡性格論 / 遺跡立地 / 出自論 / 石器群の生成 / 神子柴遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、最終氷期末の日本列島に展開した神子柴系石器群の生成とその性格についての解明である。2年度目となる平成30年度においては、以下の4点 について重点的に研究を行った。 ①:神子柴系石器群の性格や他の石器群へ影響について考究するシンポジウム「神子柴系石器群:その存在と影響」の実施。 ②:神子柴系石器群に関する石器石材原産地の調査 ③:神子柴系石器群の遺跡立地調査。④:研究成果の普及・公開 まず、①については、シンポジウム「神子柴系石器群その存在と影響」(2018・9/29・30)を、神子柴遺跡の石器全点(国重文)の展示のある長野県伊那市創造館において主催し、問題点をめぐる総括的な講演を佐藤宏之氏(東京大学大学院教授)に行っていただいた。また、各研究者が石器石材(中村由克)、石器製作技術(大場正善)、性格論(栗島義明)、東海地方の様相論(池谷信之)、北海道の存否論(中沢祐一)、神子柴遺跡本体の様相論(堤隆)を論じ、パネルディスカッションを実施した。これによって本研究の論点が明確化し、性格や広がりに関する理解が深化した。②の石器石材産地については、山梨県北杜市緑色チャート原産地(2018・5/21)、長野県和田峠黒曜石原産地(8/12)、東京都神津島黒曜石原産地(8/25)、静岡県伊豆柏峠黒曜石原産地(2019・2/19)を踏査し、石材の産状、サイズ、質などを確認、神子柴系石器群での石材利用のあり方を考える成果が得られた。③の遺跡立地調査に関しては、長野県南箕輪村の神子柴遺跡そのものや野尻湖周辺など関連遺跡を踏査し、その特徴を把握した。④の研究成果の普及・公開に関しては、さきのシンポジウムの総括講演を一般も対象とし、あわせて関連石器群を同会場で展示公開し、100名を超す来場者を得、一般の関心も高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が明らかにしたいところは「神子柴系石器群の生成そしてその性格」である。研究代表者は研究スタート年度より、その生成に関して分布的な広がりを追い、その粗密から出自を把握しようと集成を行っている。あわせてデータベースの構築を進め、基礎資料化を目指している。 一方、石器群の位置づけをめぐる多様な認識の理解も必要不可欠だが、この点に関しては当該研究のエキスパートを集めたシンポジウム「神子柴系石器群その存在と影響」を主催し、整理した。ことに性格論(佐藤宏之東大大学院教授・栗島義明博士)、分布論(池谷信之博士・中沢祐一博士)に関する議論が包括的に整理され、一定の見通しが得られた。また、同タイトルの書籍を刊行し、広くその成果を問うことができた。 重点的な研究課題である石材利用問題に関しては、研究代表者自身が、長野和田峠・静岡柏峠・東京都神津島の黒曜石原産地、および山梨県の緑色チャート原産地を踏査し、神子柴系石器群の前段階も含めたそのあり方を検討することができた。(「神津島における黒曜石原産地と菊若遺跡の石器」『資源環境と人類』9掲載論文、「野辺山高原における後期旧石器時代の緑色チャート利用」2018・6/23日本旧石器学会ポスター発表)。 上記の点において、研究は内容的にもスケジュール的にもおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である最終氷期末の日本列島に展開した神子柴系石器群の生成とその性格についての解明のため、当初の計画どおり以下の方策で研究を推進する。 ①:神子柴系石器群の生成プロセスを明らかにするため、前段階の細石刃石器群のあり方(石器形態・石器組成・石材構成)を関東・中部地方を中心に具体的に明らかにし、その連続性・非連続性を考察する。あわせてそれ以外の地域の当該石器群のあり方も注視する。 ②:神子柴石器群の遺跡性格にかかわる問題として、遺跡形成論・石器の使用痕跡論・石器の来歴分析の観点から、考究を進める。 ③:初年度から行っている日本列島における神子柴系石器群の資料集成を、器種組成や石材組成も含めて引き続き行い、データベース化を目指す。あわせて英文データベースの整備を行い内外の利用を可能とする。 ④:神子柴系石器群の生成と性格に関するシンポジウム、第1回目(2017テーマ:石斧)・第2回目(2018テーマ:遺跡性格・分布)のと異なる論点、すなわち主猟具という論点から第3回目のシンポジウムを本年度に実施し(会場調整中10~11月を予定)、さらに研究を推進する。
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Research Products
(9 results)