2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03221
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
清水 昭博 帝塚山大学, 文学部, 教授 (20250384)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 尼寺 / 古代寺院 / 飛鳥時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「日本古代尼寺の考古学的研究」をテーマとする。『日本書紀』によると、推古32年(624)当時、僧尼が1,385人いて、そのうち尼が569人いたという。同じ記録に、当時、46カ所の寺院があったことも記載されている。この46ケ寺に相当する寺院遺跡は、畿内・大和を中心に確認できる。『日本書紀』の僧尼の割合からすれば、そのうちの4割程度が尼寺であったとも考えられる。しかし、残された文献史料は少なく、46ケ寺のいずれが尼寺であったかを記録から探ることは難しい。そこで本研究では、46ケ寺をはじめとした日本各地の古代寺院の遺跡から尼寺を抽出し、それらを考古学的に分析することによって、日本古代の仏教史において重要な役割を果たした尼寺の実像を明らかにするものである。 研究の初年度にあたる平成29年度には、飛鳥時代の尼寺に関する文献史料と考古資料の基本的情報をまとめることを主眼に研究を実施した。 文献史料の集成は、『日本書紀』や法隆寺、大安寺の伽藍縁起并流記資財帳などの文献から古代の尼寺に関する記録を抽出し、データベース化した。 尼寺遺跡の集成に関しては、地名等によって尼寺に比定できる遺跡をこれまでの各地の研究成果を参考に集成し、近畿地方、中国地方の尼寺と推定される遺跡については大まかな概要を知ることがでできた。 東アジアの尼寺跡については韓国寺院研究者との情報交換をおこない、朝鮮半島の百済や新羅における尼寺とその研究の現況を確認した。また、次年度に予定する本研究に関連したシンポジウムの内容についても検討をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の初年度にあたる平成29年度には、飛鳥時代の尼寺に関する文献史料と考古資料の基本的情報をまとめることを主眼に研究を実施し、文献史料の集成、尼寺遺跡の集成、東アジアの尼寺研究の現況確認を実施した。 文献史料の集成については、『日本書紀』や法隆寺、大安寺の伽藍縁起并流記資財帳などの文献から古代の尼寺に関する記録を抽出し、データベース化することができ、基本的なデータを把握することができた。 尼寺遺跡の集成に関しては近畿地方、中国地方の尼寺と推定される遺跡について大まかな概要を知ることがでできたものの、各地域の古代寺院遺跡のすべての遺跡に対して情報を把握し、検討をおこなうことができなかった。 東アジアの尼寺跡については韓国寺院研究者との情報交換をおこない、朝鮮半島の百済や新羅における尼寺とその研究の現況を確認したものの、現地調査を実施することができず、現地での具体的情報を得ることは出来なかった。 以上、尼寺遺跡の集成と東アジアの尼寺跡の情報把握が今後の課題であり、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究2年目にあたる平成30年度には前年度から引き続き、全国の尼寺跡の集成をおこなう。また、それに合わせて、東アジアの尼寺に関する情報の収集をおこない、本研究の成果を公開するために、外国から研究者を招聘し、シンポジウムを開催する。 尼寺跡の集成は全国の尼寺跡の集成とそれら情報のデータベース化を目指すが、前年度の作業状況を鑑み、近畿以西を中心とした地方の尼寺跡の現地調査をおこなう予定である。 東アジアの尼寺跡の調査は朝鮮半島、中国の尼寺に関する考古資料の基本的情報をまとめるもので、まず、両地域の寺院遺跡の報告書、研究論文から尼寺を抽出する。また、東アジアの古代の尼寺跡のあり方を現地の研究者と討議すべく、韓国および中国において尼寺跡の調査を実施し、東アジアの古代の尼寺跡の様相を明らかにしたいと思う。 平成30年度の韓国での調査は、飛鳥時代の仏教と関わりの深い百済(韓国忠清南道扶余・公州市、全羅北道益山市)の尼寺跡、飛鳥~奈良時代の仏教と関わりの深い新羅・統一新羅(韓国慶尚北道慶州市)の尼寺跡の現地踏査をおこなう予定である。また、中国での調査は、飛鳥~奈良時代の仏教と関わりの深い建康(中国江蘇省南京市)及び長安(中国陝西省西安市)、洛陽(中国河南省洛陽市)において尼寺跡や尼寺と関わりの深い地を踏査する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度には当初の所要額より199337円の次年度使用額が生じた。その理由は家族の病気治療にともない宿泊をともなう国内・海外における調査が制限されたことである。 平成30年度の予算は1100000円で、その内訳は物品費50000円、旅費450000円、人件費・謝金500000円、その他100000円である。次年度使用額は主に旅費(450000円)に充当し、今年度の計画に加え、前年度に予定していた国内(近畿・中国・四国・東海ほか)、海外(中国・韓国)での調査を遂行したいと考える。
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Research Products
(3 results)