2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03230
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| Research Institution | Sen-oku Hakuko Kan |
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Principal Investigator |
廣川 守 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 副館長 (30565586)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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| Keywords | 周代編鐘 / シリコン型取 / 突起状型持 / 削り中子 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究協力者の樋口陽介（芦屋釜の里）とともに編鐘12器（戦国時代前期）のシリコン型取調査を実施し、とくに鐘内面のシリコン型について詳細な観察を実施した。さらに型取調査と併行して、携帯型マイクロスコープを利用して、外范と中子を固定する型持部を中心に鐘内面の観察を行った。
その結果、中子の製作方法について、中子上方を中心に広い範囲で削り痕が確認できたこと、突起状型持の存在するのが鐘表面の第2篆間で統一されていること（鐘外面紋様区画内に正確に配置されていることを示す）、わずかに膨らみをもつ湾曲の変換点がちょうど鐘外面の鉦部と鼓部の境界にあたり、中子全体形状が外范紋様区画に忠実に沿って形成されていること、などから、中子は原型自体あるいは外范に土を込めて抜いたもののいずれかを削ることによって成形したと考察した。
さらに、外范と中子を固定する型持は、すべて先端が尖った直方形状をしており、その基部周囲に輪郭線がほどこされていた。シリコン型を詳細にした結果、その成型方法は、突起の基部に型持パーツを接着した痕跡が全く無いこと、突起状型持部分の周囲で削りを止めた痕跡が存在することから、突起は型持パーツを中子に接着したのではなく、型持部分を削り残すことによって成形したと考えた。型持周囲に残された輪郭を形成する沈線は、削り出す前の段階、すなわち篆間紋様区画が残った状態の中子に、削り残して突起状型持を設置する部分を明示するためのガイドラインを入れた痕跡であろう。型持となる削り残しを確認しながら、削る厚みを調整していったと推測した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鐘の機能に大きく影響する鐘内部について、中子をシリコンで復元することにより、その表面状況を詳しく観察できた。通常、青銅器表面は極めて精細に研磨されていて、鋳型の制作痕跡が確認できることは極めて稀である。今回の調査によって、鋳造後に研磨などの表面処理が行わない青銅器内面などのシリコン型取が、中子制作技法の検証に有力なツールであることが判明した。
またシリコンに転写された中子面の観察によって、その成型方法が削り中子法であったことが明らかになった。近年の中国古代青銅器鋳型制作方法に関する研究では、削り中子の存在に否定的な見解が多かったが、本調査によって、削り中子の存在を裏付けることができた。
以上の成果より、当時の青銅鐘の機能を検証するのに必要不可欠な編鐘復元制作において、中子の制作方法が解明できたため、次年度より当初の予定通り、青銅鐘の復元鋳造を実施できる目途が立った。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の調査成果をもとに、青銅鐘の復元鋳造を実施する。鋳型制作のうち、中子については、シリコン型取によって判明した製作技法を採用し制作する。外范については、２段階の試作を想定する。第１段階は、中子に設けられた突起状型持が有効に機能するかどうかを検証することを目的として、シリコン型から石膏による無分割外范を制作し、それによる鋳造を実施する。型持の有効性を確認した後、第２段階として、春秋後期から戦国前期にかけての山西省侯馬鋳造遺跡出土の鐘范を参考にして、鈕部や本体部分の分割范を制作することにより、当時とほぼ同じ方法での外范制作と鋳造を試みる。
鋳造作業と併行して、音高、音響を解析するソフトの選定を進める。現時点で２種類のソフトを候補としているが、復元鋳造第１段階の復元品が出来上がり次第、実際に復元品を叩き、録音データの解析試験を実施する。さらに、音高・音響に極めて重大な影響を及ぼす可能性のある鋳造後の熱処理の方法を検討する。テストサンプルを制作し、複数パターンの熱処理を実施し、音の変化を確認する。
平成30年度、31年度に2か年計画でできる限り多くの鐘を制作し、熱処理の有無による音の変化、内面彫刻による音の変化を検証する。
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