2018 Fiscal Year Research-status Report
市街地内農業用水の適正な利用と維持管理に関するガバナンスの構築
Project/Area Number |
17K03236
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山下 亜紀郎 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60396794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業用水 / 土地改良区 / 流域 / 土地利用 / 水需給 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、市街地化した地域を流れる農業用水を対象に、農業利水者の利益を守りつつ、非農家も含めたさまざまな主体がその多面的機能を十分に享受しながら、地域資源として持続的に利用・維持管理していくための適正なガバナンスのあり方を提示することを目的としている。その際、ローカルスケールと流域スケールという異なる2つの空間スケールで、それぞれ異なる着眼点から水需給や水利システム、農業用水の維持管理について分析・考察した。 ローカルスケールとしては、市街地内を多くの農業用水路が流れ、環境用水としても長く市民に親しまれている石川県金沢市を対象に、各農業用水路の水利権の種別や、それらを管理している土地改良区の面積と組合員数の変遷、冬季通水の現状などについて把握した。全体的に土地改良区の面積や組合員数が減少傾向にある中、それを維持していたり増加しているところもみられることが明らかとなった。今後はそれらの中から特徴の異なるいくつかの農業用水路(土地改良区)を対象に、具体的なガバナンスの現状や適正なあり方について、調査・考察を進める。 流域スケールとしては、昨年度に構築した日本全国の一級水系109流域の環境データベースを用いて、人口特性、土地利用特性、水需給特性、地形的特性について比較分析し、各流域の地域性を考察した。1990年代から2010年代にかけて土地利用が大きく変化した流域は、13流域であったが、変化の仕方は非常に多様であった。水需給比には流域間で大きな差異があり、各地方でもともと需要の大きい都市部を含む流域でさらに需要が増え、その周辺のもともと需要の小さい流域で需要が減っており、格差が広がっている傾向がみられた。地形的特性からみた集水能力にも流域ごとに多様性がみられた。これらの分析結果は、2編の論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
流域スケールでの定量的な分析は、当初の予定通り進捗しほぼ完了しているが、ローカルスケールでの定性的な事例調査にやや遅れが出ているので、次年度はこちらの調査・分析・考察に専念する。
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Strategy for Future Research Activity |
金沢市における農業用水の利用・維持管理体制、および非農家・都市住民による用水利用や維持管理の実態を解明する事例調査を完了させるとともに、他の地域における同様の事例調査も進める。
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Causes of Carryover |
ローカルスケールでの定性的な事例調査のための旅費等を執行しきれなかったが、次年度は複数地域での事例調査を実施し、当初計画通り予算を執行する。
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Research Products
(3 results)