2018 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の産業地域形成と生活基盤の再編に関する歴史地理学的研究
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17K03237
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
湯澤 規子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20409494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近現代 / 生活基盤 / 暮らし / 女工 / 食 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代日本の経済発展の過程では、企業勃興、製造業の発展と工場の増加、労働者の誕生という現象と合わせて、「人びとの生活基盤」すなわち、消費・教育・労働・医療・福祉などが根本的に再編され、それらがさらなる産業化を誘引したことが示唆された。 そこで本研究では、近代日本における産業地域形成が経済や社会にどのような影響を与えたのかを、人びとの生活基盤に着目して明らかにすることを目的とした。具体的な研究対象としては、「紡織業地域」と「果樹栽培・加工業地域」を事例としている。平成30年度は愛知県一宮市、山梨県甲州市勝沼、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンにおける資料収集、撮影、分析、聞き取り調査を前年度から継続して実施した。また、比較分析の可能性がある他地域の史料を「労働」、「炊事」、「栄養」、「食事」などのキーワードに沿って収集している。 その成果をまず、これまでの研究論文を取りまとめた単著『胃袋の近代―食と人びとの日常史』(名古屋大学出版会)として2018年6月に出版した。次に2018年7月29日~8月3日にアメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学で開催されたWorld Economic History Conference BOSTONにおいて、Structural changes in fertilizer circulation in modern Japan: Analysis based on the change in relationship between the use of night soil and the disposal of human wasteというタイトルで報告した。加えて、2019年3月に単著『7袋のポテトチップス―食べるを語る、胃袋の戦後史』(晶文社)を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画では2019年度にアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンの近郊Lowellでの現地調査およびハーバード大学図書館での資料閲覧を実施する予定であったが、2018年度にその準備が整ったために、予定より1年早く実施した。現地では博物館、図書館での資料収集のほか、織物工場地域の景観を観察し、寄宿舎の様子などを撮影することができた。これに関する文献収集も順調に進んでいる。また、これまでの成果を2冊の単著にまとめて発表することができた。その点で、当初の計画以上に進展していると判断した。 資料収集もおおむね順調であり、2019年度は本研究を軸にしたシンポジウム発表をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①研究成果の刊行:近代日本の経済発展と生活基盤の再編に関するこれまでの研究のなかで、下肥利用と屎尿処理をテーマとした著作として『生存と循環の文化社会経済学』の刊行に向けた準備をし、2019年度内の刊行を目指す。 ②アメリカ合衆国マサチューセッツ州で収集した資料の分析に着手する。 ③2019年度秋に開催されるシンポジウムにて「生存」をキーワードとして経済発展と生活基盤の再編について報告する。 ④これまでの成果を英語論文として公表する。
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Causes of Carryover |
物品発注の際に一部メーカー希望小売価格をもとに計算した結果、納品の際の実質価格との間に若干の差が生じてしまったため。これを次年度消耗品費(書籍など)に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)