2021 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Geography on the Formation of Industrial Areas and the Reorganization of Life Infrastructure in Modern Japan
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17K03237
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
湯澤 規子 法政大学, 人間環境学部, 教授 (20409494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生活基盤 / 循環経済 / 衛生 / 栄養 / 食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代日本の産業地域形成と「生活基盤」の整備、再編のプロセスの関係を明らかにすることを目的としている。2021年度はこれまで愛知県尾西織物業地域(現一宮市)を事例とした産業史研究を通して具体的に明らかにしてきた工場労働者の生活基盤としての便所や衛生環境の問題に加えて、近代日本を俯瞰する都市の衛生史、都市と農村の関係史、衛生をめぐる精神史に関する考察を深めた。さらに、歴史的研究を現代的な課題とつなぐ議論を展開した。その成果は、「『糞壌』と『里山』に循環世界の未来を学ぶ―新・里山システムの試み」(『地理』2021)、「下肥利用と屎尿処理の歴史から考える『水環境』の未来」(『月刊浄化槽』2022)として発表した。これによって、これまで「生産」活動に偏重していた研究に対して、新たな知見を示すことができた。 上記の研究などから、近代日本における「循環経済」のひとつのあり方としても注目すべき現象が抽出されたため、現在、この成果を英文でとりまとめ、分担執筆による出版準備が進んでいるところである。 また、教育・労働・福祉に関わる「生活基盤」については、愛知県尾西の織物工場、埼玉県の栄養改善事業の資料をもとに分析を進めた。その成果は、「働く心身はだれのものか?―近代日本における栄養行政と労働者の生活世界」(『新しい歴史学のために』2021)として発表した。マサチューセッツ州ボストンでの資料調査に基づく分析は継続しており、「食」からみた「日常史」の日米比較史研究という内容で執筆し、発表する予定である。その基礎研究として、「近代都市の惣菜史―『火』を買う・借りる・共有する」(『現代思想』2022)を発表した。前年度から着手した労働者の「間食」としての菓子に関する資料収集も継続している。工場労働者の生活史資料に登場する「間食」の記録とも照らしながら分析していく予定である。
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Research Products
(12 results)