2019 Fiscal Year Research-status Report
産業集積におけるネットワーク共進化と関連多様性に関する研究
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17K03239
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
與倉 豊 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (70586552)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 関連多様性 / 進化経済地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は九州の産業集積が有するポテンシャルに関する研究と,東京および大阪の大都市圏域におけるイノベーションに関わる地域産業技術の把握可能性について調査を行った. まず,知識経済化が進む現在において、半導体産業や自動車産業の集積で知られる九州においても、イノベーションを連続的に創出するための環境整備が課題となっている.本研究では地域新生コンソーシアム研究開発事業のように地域を単位とした科学技術振興政策を事例として、共同研究開発ネットワークの空間的な拡がりや域内・域外の相互作用関係を検討し、九州の地域イノベーションの現状を明らかにした.また経済地理学の分野で注目を集めている関連多様性概念について検討を加え、九州の地域イノベーションのポテンシャルを評価し、産業集積の高度化のための課題を考察した. 九州の工場立地を検討したところ,製造機能のみの分工場の立地だけではなく、研究開発機能も備えており、また工科系の大学や高等専門学校もあることから、イノベーションを生み出す素地は十分あると考えられる.しかしそれらの多くは九州北部の福岡大都市圏および北九州大都市圏に集中しており、九州南部をみると一部を除き、やや見劣りがするのも事実である.本研究において,これが九州において産業の集積は進んでいるが、地域イノベーションの観点からみると競争劣位な状況にあることを示唆する可能性を指摘した.そして九州の産業集積の高度化のためには、他の地域ブロックを参照しながら,地域の実態に即してイノベーションが連続的に創出される仕組みを積極的に採用していく必要があるとの結論を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に研究手法の一つとして記載していた現地調査に関しては,聞き取り先の企業の選別に時間がかかり,計画通りに進まなかったものの,本研究課題の目的の一つである,関連多様性に関する計量的な分析を完了することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は産業連関表を用いるなど実際の産業間の取引関係や、産業技術的な融合可能性を考慮に入れた関連多様性の定量化を行う.
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Causes of Carryover |
計量的な実証分析のためのデータベース作成を自身で行ったため,当初予定していたデータベース作成のための人件費が生じなかった.次年度ではそれらを書籍およびコピー代に充てる予定である.
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