2017 Fiscal Year Research-status Report
Empirical analysis on the situations of municipalities on the provincial regions and evaluation on pro-meger and development policies of governments
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17K03240
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
西原 純 静岡大学, 情報学部, 名誉教授 (30136626)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 平成の大合併 / まち・ひと・しごと / 地方圏 / 人口ビジョン / 定住自立圏 / 地方都市 / 生活拠点 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方消滅が叫ばれるほど地方圏の市町村は深刻な状態にある。この危機に対抗するため、本プロジェクトでは、1) わが国政策(平成の大合併政策・地方創生総合戦略)の分析・評価、2) 平成の合併後の地方圏市町村の現状分析(定住自立圏・小規模自治体の存立状況)の解明、3) 今後の地方創生総合戦略の方向性の検討と提案(地方都市の復活・定住自立圏の進化・小規模自治体の運営)を、マルチスケールな手法で行う。 課題1)に関して、22県の「平成の大合併の検証・評価報告書」から、合併後の行政組織再編を把握し、支所の存在意義と今後の支所のあり方について分析を行った。特に、非効率的な組織と指摘されている分庁方式を解消する手法として、「県地方局と機能合体」をした秋田県横手市を訪問調査し、その成果を明らかにした。 課題2)に関して、マクロ・メソスケール分析用として、全国1,718自治体について、地方中枢都市圏・定住自立圏・DIDの状況、人口・増減率など各種基礎資料を作成した。ミクロレベルの例として、超広域合併を実施した浜松市の地域存立状況を分析した。天竜区を対象に中山間地域の拠点集落の持続可能性とその課題について、衰退する郊外の事例として南区を対象に拠点地区を中心とした生活利便性について、経済センサス・国勢調査小地域統計分析、住民アンケート調査などによって明らかにした。さらに、これらの買い物困難地域で支援対策としてネットショッピングの可能性と課題について明らかにした。 課題3)について、47都道府県および全国1,718市町村の人口ビジョン・総合戦略のデータを収集し、東海地方4県160市町村人口ビジョンのメタデータを作成した。総合戦略に関して、秋田県横手市・静岡県掛川市でインタビュー調査を対象に、策定プロセス・現状と課題を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果(論文1件=査読付・学会発表3件)と、全体の研究作業の進捗状況を考慮して、一部には作業の遅れはあるものの、全体の進捗状況を2)と自己評価した。その根拠は以下のとおりである。 課題1)に関して、合併後から縮小されて続けている支所の存在意義と今後の支所のあり方についての議論を、経済地理学会中部支部例会にて口頭発表した。支所タイプを総合支所・分庁舎支所・窓口機能に分け、支所の存在意義を、支所地区の地域特性・人口動向と関連させた点に独自性がある。また分庁方式採用自治体の行政組織再編の方策として、秋田県組織との機能合体によってそれを解消させた横手市の事例を発見し、詳細な訪問調査も実施した。この成果は来年度に発表する予定である。 課題2)に関して、・定住自立圏中心都市の存立状況(ひと・まち・しごとの現状)・小規模自治体の存立状況(非合併自治体問題)についてのマクロ分析用の基礎データは作成済みである。ミクロスケールにスケールダウンして、合併によって広域自治体・政令指定都市になった浜松市を事例に、詳細なその実態と今後の周辺地区の持続可能性について明らかにした。特に、南区を事例とした研究では、アンケート調査を行い、買い物困難地区の解消のためにネットショッピングの導入を検討しており、地理学と都市計画の両分野に関連する成果として注目されよう。 課題3)に関して、人口ビジョン、まち・ひと・しごと創生戦略のメタデータ作成が遅れている。「次年度使用額」欄に記述したように、メタデータ作成のための補助作業者には、専門的な知識が必要なため、1名の補助作業員を雇うに止まってしまい、この項目の進捗率は50%に止まってしまった。しかしながら、作成した人口ビジョンのメタデータは有力な情報となり、次年度の一層の研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で記述した3つの研究課題のうち、本年度は1)と3)を重点にして研究を進める。今年度は、国際会議1件、国内学会3件の学会発表を実施する予定である。 課題1)では、平成の大合併を行った全国の自治体の帰趨について、引き続き合併自治体の組織再編の資料の再収集・分析をしながら、「合併の空間論」という視点を理論化しつつ、論文投稿に向けて鋭意準備を行う。また広域合併を行った浜松市を事例にして、区再編・区割りの議論、行政組織の再編、支所の縮小、地域自治制度と地域内分権体制の変遷、地域支援型NPOの取り組みについて、最終的な分析を進め論文投稿に向けて作業を行う。 課題3)では、昨年度に引き続き、東海地方4県160自治体について、まち・ひと・しごと総合戦略のメタデータを作成する。そして昨年度に作成した人口ビジョンメタデータとともにこれらのメタデータを元に、小規模自治体~大規模自治体、合併自治体・非合併自治体、国・県との整合性・市町村の独自性という観点から、ビジョンと総合戦略の課題・達成の可能性について分析を進める。その際、「人の社会移動均衡を達成できるか」、「2030年合計特殊出生率1.8を達成できるか」、「雇用を増やせるか」、「新規産業を育成できるか」をリサーチクェスチョンとしながら考察を進める。 加えて東北地方市町村について、人口ビジョンとまち・ひと・しごと創生戦略のメタデータの作成を引き続き行って、東日本大震災で甚大な被害を受け、さらに原発事故の影響を受けた自治体がいかに総合戦略づくりを行ったかについての分析準備を行う。さらに引き続き、小規模自治体を中心に、まち・ひと・しごと創生戦略について、策定過程、国の補助事業の活用、KPI達成の見込みなどについて、訪問調査を実施する。
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Causes of Carryover |
H29年度の所要額(直接費)1,400千円のうち、次年度使用額は約300千円となっており、その割合は約20%である。次年度使用額が生じた理由は、謝金による作業のうち、人口ビジョン、まち・ひと・しごと創生のメタデータを作成する作業で、作業者に専門的な能力が必要なため、1人の作業者で行わざる得なかったためである。 この次年度使用額分は、資料整理作業分としてH30年度に早めに作業することと、国際地理学会都市地理学研究委員会年会(カナダ・モントリオール)で発表を行うことに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)