2018 Fiscal Year Research-status Report
GISデータベースの活用による前方後円墳の地域性に関する歴史地理学的研究
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17K03245
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
出田 和久 京都産業大学, 文化学部, 教授 (40128335)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 前方後円墳 / GISデータベース / 分布 / 地域性 / 考古地理学 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
GISを使用したデータベース構築のため、各古墳の属性データや現地調査による立地に関する所見等の入力を行うとともに、昨年度進められなかった前方後円墳に関する新資料の追加入力と、国および県の史跡指定を受けたものを中心とする円墳・方墳のデータ整理を進めることができた。さらにこれまでに収集した資料により適宜追加・修正を行い、古墳GISデータベースとするために必要な各古墳の位置情報を、これまでの現地踏査によって確認・取得した所在地の地理座標および調査対象としなかった古墳については発掘調査報告書や遺跡地図のほか収集した資料をもとに、データベース登載の対象とする古墳の正確な地理座標を求めた。 データ入力が一段落した九州地方について試行的に若干の検討を行った。前方後円墳では丘陵ないし山地に所在するものが約半数、台地・段丘上が約4割あり、その内前者では4割強が稜線上か先端、後者では約3分の1が端部に立地する。円墳・方墳では5割弱が丘陵、3割弱が台地・段丘に立地し、ほぼ同様の傾向を示す。これを直径30m以上の比較的大規模の円墳では、丘陵に立地するのは約3分の1、台地・段丘上が約半数となり傾向が異なり注目される。 成果公開のためのWebGIS版古墳データベースとするための表示項目を検討した。また、成果発信のためのポータルとして研究室のホームページを制作した。 調査では、内陸盆地で扇状地立地の多い長野県域では積石塚古墳が多くみられ、古墳の立地と古墳構築材料との関連が注目された。また、円墳・方墳は比較的小規模な平野を背域とする場合には、平野周辺の丘陵の先端部に立地するものが目立ち、比較的広い平野では沖積平野をのぞむ台地上の縁辺部に立地するものが多くみられた。後期の古墳群では中心的な古墳は丘陵の上部の稜線上に立地し、それ以外は丘陵斜面に立地するものが多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国および県の史跡指定を受けたものを中心として、考古学的に重要であったり、全国的にあるいは地域内でみると特徴的な円墳・方墳に関する資料の収集と内容の整理を、学生アルバイトを雇用して進めた。前方後円墳・前方後方墳に関する新資料の収集と古墳の立地や内部主体、副葬品などのデータ整理を進め、前年度の遅れをかなりの程度回復することができた。 GISを使用した古墳データベース作成のために必要な古墳の位置情報は、これまでの現地踏査によって計測した地理座標(緯度・経度)を用い、現地踏査が行えなかった古墳については発掘調査報告書や遺跡地図など収集した資料をもとに地理座標を求めて作成した。古墳に関する情報と位置情報の整理・入力が一段落した九州地方についてはGISデータベースを暫定的に作成した。 成果公開のためのWebGIS版古墳データベースの作成については、今年度ひとまず入力を終えた九州地方の古墳をもとに、研究協力者として石﨑研二奈良女子大学教授の助力を得て、表示項目案と表示方法等について検討した。さらに、このデータベースを京都産業大学のホームページ上で公開するためのポータルとして研究室のホームページを制作した。なお、これには本科研の成果について逐次追加していく予定である。 調査はほぼ予定通り東北と九州および中国地方について実施するとともに、内陸盆地に多くの古墳が立地する長野県地方の調査を前倒しで進め、扇状地立地の多い長野県域では積石塚古墳が多く、古墳の立地と古墳構築材料との関連が注目された。なお、東北と九州、中国地方は広域にわたるため調査時間が若干不足し、一部地域の調査が残ることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査に関しては長野県域を除く中部地方と、前年度に調査を残した東北南部、九州中南部、中国地方(ただし、広島県域以外)についてできるだけ早い時期に実施する。 また、作成したデータベースの暫定版をもとに、年度の前半のうちに古墳が多く分布する平野を事例として、古墳の立地・分布・密度等と古墳造営集団の推定される領域内の生産地との関連を検討する。なお、古墳時代における各地域の生産地を復元するのは困難であるので、ここでの生産地は、地形分類図を使用して「谷底平野および後背湿地」等の水田化が可能と思われる地形面を「水田可能地」とみなして、その面積をGISにより計算し、生産地面積の指標とする。その際、時代は下がるが『和名抄』にみえる国ごとの田積史料を考慮する等の工夫を行う。具体的には古墳の規模や密度、古墳築造時期とこの「水田可能地」の面積の大小との関連等についての検討を進める。この検討が有意義との見通しが得られれば、検討対象地域の事例を増やす。 また、構築したGISデータベースも活用して古墳の規模、内部主体の種類・構造、副葬品、立地等も踏まえて古墳の地域類型を設定し、全国的視野のもとにいわゆる前方後円墳体制の検証を行う。さらに、古代豪族に関する歴史学等の成果に注意しながら、各地域における古代豪族の動向と古墳築造の推移等を視野に入れながら、地域性を重視した古墳時代像の描出を行う。 さらに、成果の一部をWebデータベースとして発信する。
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Causes of Carryover |
前年度の調査の過程で、史跡指定を受けたもののほかに考古学的に重要であったり、全国的にあるいは地域内でみると特徴的な円墳や方墳があり、これらの地域における特性等に鑑み調査対象古墳を多くした。そのため、当初の計画よりも調査に時間を要し、一部地域については次年度の追加調査が必要となると予想されることから、今年度の人件費・謝金、その他の支出を抑制したので次年度使用額が生じた。次年度はこの追加調査の旅費に振り向け、調査の充実を図る。 また、成果発信の方法を報告書の出版からWeb利用による発信に変更したが、そのためのプログラム制作の業者委託費用が当初の見込みよりも若干増加しそうであることから、同様に人件費・謝金、その他の支出について可能な分は抑制した。次年度使用額の一部をこの増加分に振り向ける。
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Research Products
(1 results)