2019 Fiscal Year Research-status Report
戦間期の日本における都市農村関係の社会地理学的研究
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17K03250
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠城 明雄 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (00243866)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会地理学 / 都市農村関係 / 民衆運動 / 都市政治生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「都市政治生態学」の視点から、戦間期の日本における都市・農村関係の転換を、都市計画と区画整理事業をめぐる諸社会集団の対立と協働、およびし尿処理をめぐる都市・農村関係という二つの課題を通して明らかにするものである。本年度は前者に関して、呉市について関係資料の調査を実施し、後者に関して、広島市、佐世保市、下関市について、新聞資料や役場資料の調査と資料収集を実施した。基本的な研究成果は以下の通りである。 1)呉市については、下水道の設置をめぐって、市役所と海軍が検討会議を開催して、中央から派遣された海軍の技師を中心に、下水道の整備の検討が行われていたことが明らかとなった。海軍側は衛生上の観点から早期の建設整備を求めたのに対して、市側は財政上の理由から回答を留保している。 2)広島市に関しては、し尿処理の市営化が終了後、農会などの斡旋によって、遠方の瀬戸内海島しょ部の農村地帯にし尿や塵芥がより多く搬出、販売されるようになり、し尿の販売圏を拡大することで、近郊農村地帯の都市化に伴う需要減少に対応していたことが明らかとなった。 3)下関市でも周辺農村による屎尿代値下げ運動が発生しており、その要求内容や都市側の対応などがある程度明らかとなった。 4)佐世保市では大正後期に、海軍のし尿処理が販売から随意処理に変更されたことが明らかとなった。佐世保市全体のし尿処理の市営事業化の中止との関係はよくわからないが、軍隊と地域社会の変化を示す事象であるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新聞資料、役場資料などの調査から、広島市、呉市、佐世保市における大正中期以降の屎尿処理をめぐる都市・農村関係の変化、市営事業化の問題点、軍隊と農民、市行政との関係について基本的情報を収集した。また都市計画事業と土地区画整理事業に関しても、それに対する地域内部の議論やその背景について、基本的情報を収集した。 このほか、社会・政治地理学(特に都市政治生態学やコモンズ研究、惑星規模での都市化)の研究動向に関して、英・仏・独語圏の文献を検討し、その認識論や論点などを明らかにして、日本の経験的研究との接点を考察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスのため、最後の資料調査が行えなかったため、その調査を実施して、本研究の最終的なまとめを行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスにより、当初予定していた資料調査が急遽行えなくなったため、次年度使用額が生じた。事態が収束後、関係機関の開館をまって早急に調査を行い、本研究の最終的なまとめを行う計画である。
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