2017 Fiscal Year Research-status Report
横浜スカーフ産地における女性労働の地誌学―地場産業研究の新展開をめざして
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17K03258
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中澤 高志 明治大学, 経営学部, 専任教授 (70404358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 横浜スカーフ / 捺染業 / 縫製 / 内職 / 地場産業 / 女性労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
神奈川県立図書館,横浜市立図書館,神奈川県立公文書館などが所蔵する横浜のスカーフ・捺染業関連の資料のリストを作成し,資料収集を実施した.横浜スカーフ・捺染業においては,特に縫製部門において女性による内職労働が重要な位置を占めるため,内職一般に関する資料収集も実施した.その結果,1960~1970年代にかけては,大都市においておびただしい数の内職者が多種多様な産業の末端を支えており,高度経済成長を支える低賃金労働力基盤として,より大きな位置づけを与える必要性を痛感した.また,1980年代までは,内職者に対する行政の手厚い支援があり,神奈川県が発行する内職者向け定期刊行物『内職かながわ』などの重要な資料も見出された.特に神奈川県立公文書館において,川崎市の職業安定所が1980年前後に受け付けた約280人分の内職者相談票の個票を発見したことは大きい.ただし,資料は系統的に所蔵されておらず,網羅的に収集するにはさらに時間を要する. スカーフ・捺染業については,横浜繊維振興会やギルダ横浜といった関連団体の支援を受け,10程度の企業や団体に対してインタビュー調査を実施した.また,本研究の主たる目的である横浜スカーフ・捺染業を支えてきた女性の仕事と家庭生活の実態に迫るため,現時点で12人の女性に対してインタビュー調査を実施した.こうした女性たちは,若い人でも70歳前後であり,業界の最盛期を支えてきた人たちは80歳を超えている.そのため,調査対象にアプローチすることは容易ではなく,記憶があいまいな部分もある.したがって,資料による裏付けが必要となるが,横浜スカーフ・捺染業に関する団体の多くはすでに消滅しているため,資料が散逸してしまっている.これをいかにフォローするかが課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集では重要なデータが見出されたし,パイロットスタディと位置付けた初年次の聞き取り調査もある程度まとまった数を実施できた.
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集の結果として,日本の高度経済成長に果たした内職労働の重要性を痛感したので,横浜スカーフ・捺染業に軸足を置きながらも,内職一般を見据えられるように研究を発展させたい.横浜スカーフ・捺染業の縫製部門で働く女性については,なかなか対象者を広めていくことが難しい.関係者の協力を募り,調査に応じてくれる方を確保することに努めたい.
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Research Products
(3 results)