2018 Fiscal Year Research-status Report
横浜スカーフ産地における女性労働の地誌学―地場産業研究の新展開をめざして
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17K03258
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中澤 高志 明治大学, 経営学部, 専任教授 (70404358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 内職者 / 地場産業 / 労働の地誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
横浜のスカーフ・捺染業関連の資料の収集・分析を継続するとともに,収集するとともに,高度成長期を中心とする神奈川県内の内職者関連の資料の分析に着手した.スカーフ・捺染業に限定せずに内職者一般に視野を広げたのは,大都市におけるおびただしい数の内職者が多種多様な産業に従事しており,高度経済成長を支える低賃金労働力基盤として,より大きな位置づけを与える必要性を実感したからである.特に重要な資料として,1960年代半ばに神奈川県が県内全域を対象に実施した内職者調査がある.後述するとおり,現存する縫製業者の紹介によって,スカーフ・捺染関連の内職に従事した(している)女性をこれ以上確保することは難しくなっているが,この資料を基づけば,高度成長期にスカーフ・捺染関連の内職者が多かった地域が市町村よりも狭いレベルで特定できる.それによって,地域ベースで調査計画を練り直すことが可能になるかもしれない. スカーフ・捺染業については,横浜繊維振興会やギルダ横浜といった関連団体の支援を受け,これまで10程度の企業や団体に対してインタビュー調査を実施した.また,横浜スカーフ・捺染業を支えてきた女性の仕事と家庭生活の実態に迫るため,現時点で20人弱の女性に対してインタビュー調査を実施した.しかし,高度成長期に内職に従事した女性たちが高齢化していることと,縫製業者が内職の工賃や労働条件を知られることを嫌い,現職の内職者を紹介してもらうことが難しいことから,これ以上の対象者の確保は難しそうである. 単著『住まいと仕事の地理学』ならびに木本編『家族・地域のなかの女性と労働――共稼ぎ労働文化のもとで』を公刊できたことは,研究成果として大きい.特に後者においては,本研究を理論的に支える「労働の地誌学」の考え方について詳述している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アーカイブ調査では,予想以上に重要な資料が得られた.一方で,しかし,スカーフ・捺染関連の内職に従事した女性に対するインタビュー調査に関しては,対象者が高齢化していることと,縫製業者が内職の工賃や労働条件を知られることを嫌い,現職の内職者を紹介してもらうことが難しいことから,これ以上の対象者の確保は難しそうである.
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査の対象者をこれ以上確保することが難しそうであるため,豊富に得られた資料に基づき,内職一般に視野を広げ,高度経済成長と大都市圏における内職労働力の関係性について検討する.その結果を学会で報告し,論文化することを目指す.
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Research Products
(10 results)