2018 Fiscal Year Research-status Report
避難の意思決定における人的つながりの影響からみた避難困難の地域特性
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17K03259
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
村山 徹 愛知大学, 三遠南信地域連携研究センター, 研究助教 (80706862)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 避難行動 / 避難の地域特性 / 災害情報の認知 / 記述的規範 / 命令的規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、避難行動に資する災害心理、親族の周辺居住や近所づきあいといった人的つながりなど、ハード面だけでなくソフト面に注目することで災害避難の地域特性を解明することを目的の1つとする。本年度は、避難困難となる要因を明らかにするため、災害リスクが高い沿岸部とリスクの低い内陸部それぞれでのアンケート調査を実施した。 結果、高リスク地域では、避難行動を規定する心理的要因に自然災害の種類による影響があることが分かった。くわえて、平常時より自然災害への不安感が高いがゆえに、災害の種別によっては災害現象を正常化する傾向があることも確認できた。また、低リスク地域の方が「避難すべき」といった絶対的価値観に基づく避難促進が可能だが、高リスク地域では、周辺住民などとの同調による避難促進が有効である可能性を示唆できた。 避難時に頼れそうな親族の分布に関しては、同市内が約50%と高く、次いで県内や地域内などといった遠距離圏での人的つながりがみられた。一方、頼れそうな知人の分布に関しては、同町内と同市内が約40%と、近距離圏での人的つながりを確認できた。 さらに、旧集落の町字においては、住宅造成地などの町字との比較において、発災直後の避難に資する隣人による支援が期待できることが分かったが、長期的な避難生活を支援できるような人的つながりが希薄であることが明らかとなった。 以上の結果に関しては、「避難行動と減災に資する人的つながりの地域特性」と題して日本地理学会で口頭発表した。そして、市の生涯学習講座でも分析結果の一部を報告することで、地域への研究成果の発信に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、前年度に構築した分析対象エリアの町内会関係者とのネットワークを生かすことで、災害リスクの高い沿岸部の小学校区と災害リスクの低い内陸部の小学校区でにおいて、3000世帯強を対象とした災害避難に関する意識調査を実施することができた。そして、研究計画に基づき、避難判断に影響する人的つながりや災害心理の地域特性を分析することができ、研究成果の地域社会への実装に向けてもある程度の成果があったと考える。 しかし、GISを用いた人的つながりの空間分析に関しては、データ可用性の観点等から当初予定からの軌道修正を図っている。
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Strategy for Future Research Activity |
災害心理や人的つながりに関する意識調査結果をもとにして、避難を助長するプッシュ要因と逃げ遅れの原因となるプル要因に関するさらなる分析に取り組む。また、避難条件などに関する補足調査を実施したり、GISを用いた空間分析の方法を探求したりすることで、災害脆弱性の地域特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定では、調査票の全戸配布にかかる日数を4日間と想定していたが、作業工程を見直したことでかかる日数が軽減でき、アルバイトの人件費を抑えることができたたために次年度使用額が生じた。 第29回の国際地図学会での報告など、研究成果の発信とさらなる分析のための追調査費用として使用する計画である。
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