2021 Fiscal Year Research-status Report
輸入農産物影響下における野菜生産法人の増加と産地再編成
Project/Area Number |
17K03266
|
Research Institution | Kagoshima Prefectural College |
Principal Investigator |
岡田 登 鹿児島県立短期大学, その他部局等【商経学科】, 准教授 (10778880)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 土地改良事業 / 畑地かんがい事業 / 農業法人化 / 野菜生産法人 / 生産空間拡大 / 九州地方 / 鹿児島県 / 南九州市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では農家が産地と関わりながら農業法人化するプロセスをたどり、その手段としてどのような産地条件が重要であるのかを、野菜生産法人を事例に解明することを目的として進めている。 令和3年度には、土地改良事業または畑地かんがい事業の展開と農業法人化の関係性を分析した。九州地方では国営土地改良事業の実施地区が多い県において法人経営体が多く設立されており、1970年代以降には国営かんがい排水事業に事業転換されている。このうち鹿児島県では野菜生産法人の設立地域と畑地かんがい事業の受益地が一致しており、この事業を契機として自治体から独立した営農推進組織が設立され、ここが民間業者と直接的な関わりを持つことで野菜生産法人設立の進展を促進させていた。また、鹿児島県南九州市を事例に野菜生産法人が遠隔地の農地を利用して生産空間を拡大する過程を調査した。野菜生産法人は野菜洗浄機の売買行動によって形成されたネットワークを農地の売買行動のネットワークへと変容させることで野菜生産空間を拡大しており、既存のネットワークを最大限に活用しながらも新たな生産空間でネットワークを追加することで、労働力や取引先を確保し、農地や農業資材を取得して野菜生産を維持していた。 以上の研究結果を論文として「九州地方における土地改良事業の展開と農業法人化」(鹿児島県立短期大学商経論叢、72、1-18)、「鹿児島県における畑地かんがい事業の展開と農業法人化」(鹿児島県立短期大学紀要 人文・社会科学編、72、41-59)、「農業法人による生産空間の拡大過程―鹿児島県南九州市を事例に―」(鹿児島県立短期大学地域研究所研究年報、53、63-76)を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度には、野菜生産法人が設立される以前に野菜産地として確立している事例の調査研究を実施した。また、同年には平成31年度に予定していた出荷・輸送方法が限定される地域の調査研究も実施できた。平成30年度には、野菜生産法人が設立される以前に野菜産地として十分に確立していない地域での調査研究を実施した。令和元年度には、平成29・30年度の調査結果と比較するために、大都市近郊の野菜産地での調査研究を実施した。令和2年度には、農家が設立した農業法人の分布特性と事業展開に関する調査研究を実施した。また、農業法人による経営規模拡大と政策的支援に関する調査研究を実施した。 令和3年度には、土地改良事業または畑地かんがい事業の展開と農業法人化の関係性を分析した。また、鹿児島県南九州市を事例に農業法人が遠隔地の農地を利用して生産空間を拡大する過程を調査した。この結果、研究論文3本を発表することができた。しかし、令和3年度には新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査を十分に実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの平成29・30年度では大都市圏から遠距離に位置している3つの野菜産地を事例に、令和元年度には大都市近郊の野菜産地を事例に調査を実施した。この結果、野菜産地の農業法人化を捉えるためには、産地内の他の農家や農協などの地縁的組織に依存しない脱産地化の視点が重要であった。このため令和2年度には、農家が設立した農業法人化の事業展開を確認したうえで、改めて事例地域を選定し、産地内の農家や集出荷組織以外に、どのような主体との関係性が野菜生産法人の設立を実現させているのかを分析する必要が生じた。しかし、令和2年度および令和3年度には新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査を十分に実施することができなかったため、補助事業期間を延長して研究を推進する。
|
Causes of Carryover |
令和3年度には新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査を十分に実施することができなかったため、補助期間を延長して研究を推進する。
|
Research Products
(3 results)