2021 Fiscal Year Annual Research Report
Repatriation in the Process of Decolonization and the Public Role of Anthropologists
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17K03267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小田 博志 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30333579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / repatriation(返還/帰還) / 研究倫理 / トラウマ / 記憶 / 対話と共働 / 公共人類学 / 生命論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の最終年度における最大の実績は、ウェブサイト「脱植民地化のためのポータル」の製作である(URL:https://decolonization.jp)。そこでは本研究課題の実施期間中に調査を行った次の3つのフィールドを取り上げた:1 ペルー アヤクチョ:武力紛争で奪われた家族の記憶、2 カナダ ユーコン:大学と先住民族との共働、3 日本 サッポロ:アイヌ・コタンのある風景と遺骨の帰還。 各フィールドにおいて、植民地状況における暴力とトラウマ、先住民族遺骨の収奪とrepatriation(返還/帰還)、記憶や研究の脱植民地化の取り組み、大学と先住民族との対話と共働、研究倫理、先住民族の視点から見えてくる〈いのちの風景〉などのテーマに関する情報を収録した。これは研究の成果を研究者に限らない多様な閲覧者にわかりやすく還元することを目的とする、公共人類学的なプロジェクトである。また各フィールドに関わる研究協力者と準備・構想の段階から話し合い、共働で作業を進めた。その結果、1 アヤクチョ編では、1980年からのペルーの国内武力紛争に関する日本語での初めてのまとまった情報源の提供、バーチャル記憶博物館という新機軸の導入、行方不明者の遺骨のrepatriationの現場を明らかにする記録の収録を実現した。2 ユーコン編は研究協力者の経験に基づく、大学と先住民族との共働を知ることができる充実した内容となった。3 サッポロ編は現在の札幌市とその周辺に存在したアイヌ・コタンを可視化し、記憶を脱植民地化する「もうひとつのサッポロマップ」をオンライン上に作成した。 このほか生命論を正面から展開した論文「いのちの網の目の平和学」を学会誌『平和研究』に掲載した。これは本研究課題の理論的成果である。 さらに勤務校においてrepatriationに関する対話の場としての「学習会」を共働で開催した。
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Research Products
(2 results)