2018 Fiscal Year Research-status Report
「一人っ子政策」以降の中国における家族についての文化人類学的研究
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17K03269
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川口 幸大 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60455235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国 / 広州 / 親族 / 家族 / 宗族 / 少子化 / 姻族 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度度に遂行した研究の内容は、人々の集いに着目し、誰がどのように集まり、いかなる活動をどう行っているのかについての調査を行って資料を収集したことである。具体的には、中国広東省広州市郊外に暮らす人々に対して、日常の往来や会食、休暇期間中の行楽や旅行、実家への里帰り、食事会、金銭を含めた贈与行動への参与観察を行うことで、家族・親族・友人知人の誰がそこに関わり、誰とどのようなやり取りを交わしているのかについての詳細なデータを得ることができた。 その結果として明らかになったのは、とりわけ50代以下の中年から若者世代の人々において、男性の場合は姻族との、女性の場合は生家との関係性が、それ以前の世代の人々と比べて密接であるということ、一方で父系の親族原理をもとに形成されている宗族に対しては、祖先祭祀や新年の集いなどの際には以前よりも確実に深い関わりを持っているということである。 従来の研究では、人々が個人化しているとか、核家族が重要なユニットとなっていると指摘されてきたが、本研究の結果からは、子どもの世話の依頼から日常の共食に至るまで、特に生家との関係性は非常に緊密であり、その重要度はむしろ増していることが明らかになった。この知見は先攻研究の見解に再考を迫るものであり、むしろ少子化が進行しているからこそ、核家族には止まらない親族関係の重要性が高まっているという仮説を得られたという点で、大きな意義があるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、上に記したような諸活動や集いを数多く具体的に調査することができたことに加え、宗族の祠堂の落成式という、極めて重要な活動が行われ、かつそれを調査してデータを得ることができたという点で、この評価に至ることになった。日常的な家族・親族の状況に止まらず、特別感が極めて大きな宗族の活動には、例年の祖先祭祀を上回る数の親族成員が集い、成員たちを引きつける父系親族原理の重要さが裏付けられることになった。 このように、日常生活を共にする家族単位から、公的な性格の宗族に至るまでのデータを収集できており、本研究は計画以上に順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度は、上記の結果についての補足調査に加えて、親族外の友人・知人等との付き合いややり取りについてのデータを収集し、家族・親族についての分析結果を相対的に検証する。 また、研究成果を公開すべく、日本文化人類学会研究大会への参加、ジャーナルへの投稿を行うとともに、本研究をさらに発展させた次の展開へ向けての展望を構想する。
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