2017 Fiscal Year Research-status Report
Indigenous knowledge and disaster risk reduction: Revitalizing local agriculture and fishing industry in tsunami-hit areas
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17K03270
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00305400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ボレー セバスチャン 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (70751676)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 災害人類学 / レジリアンス / 在来知 / 日本研究 / 漁業 / 稲作 / 震災復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災後の宮城県地域社会の農業漁業の復興過程を民族誌の手法によって明らかにすると共に、住民の在来知が、復興期の災害リスク軽減(減災)研究においてどのような役割を発揮するか探求する。今年度はこの事業に必要な調査方法・視座を確立するとともに被災地での農業漁業の調査体制を確立し、それぞれの現場における課題を見つけることが目的であった。 在来知と減災の調査方法については、メンバーでの議論を通して防潮堤建設や土地区画整理等の復興政策を踏まえながら、農業漁業の経営形態、生産物の種類と生産手段、社会規範についての民族誌情報を解明し、それを政策適用可能な知とする必要性が確認された。 今年度の大きな成果は、それぞれ調査地域を選び、主要インフォーマントとの関係を確立するなど、今後の調査体制を確立したことである。具体的には北から牡鹿半島・東松島・塩竃市桂島・仙台市七ヶ浜・名取市閖上、岩沼市、山元町磯浜の漁業集落である。農業については山元町となっている。 このなかでそれぞれの漁業活動や経営タイプに応じた調査を行ったほか、漁業復興政策についての資料収集も行った。特に漁業復興政策が漁業者あるいは漁業経営組織にどのような影響を及ぼしているのか、防潮堤建設、漁場と資源配分、水揚げ量と販売などについて予備的な社会資料を収集した。一方で、漁業集落における神社や慰霊碑についても調査を行い、漁業者の社会組織と信仰について民族誌資料を収集した。これらは荒削りだが、漁業復興過程についての一次資料を収集したことである。これらを踏まえ次年度以降の本格調査の見通しを得たことは大きい。 なお、農業調査についてはこれまでの蓄積を踏まえて論文を執筆し、復興行政のなかでの在来知の役割を解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業のテーマで初めて研究を開始したメンバーが着実に現地調査体制を構築したこと。また漁業復興に係わる具体的な調査項目を提示できたことで、今後の調査研究活動の見通しが構築できた。特に日本の漁業人類学の専門家と面談し、研究方法についての助言を得る機会を設けたことは有用であった。宮城県のほぼ全域を調査することができたことも、様々な属性に係わる資料をえる観点から有用だった。 代表者と分担者は同じ大学に勤務しており日常的に研究打ち合わせができた。デンマーク在住の研究協力者も予定通り、日本を訪問し調査を実施できた。 また本研究事業に関連して5本の学術論文、6本の学会・研究会発表、1冊の学術図書の刊行を行ったことも大きい。活発な研究活動を展開できた。 なお、農業復興については、国際学術雑誌に論考を投稿し、査読をへて2018年度に掲載されることが決まった。このなかで被災地で進行する大規模化経営農家にとって労働力を効率的配分が必要であり、この点において在来知のある部分を地域社会で共有する行政からの働きかけが必要であるとの結論に達した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度分担者、研究協力者とともに調査成果を共有するとともに、相互の調査の関係を化クリルさせることが必要である。そのことでそれぞれの立場からの漁業復興における在来知の役割が解明できるだろう。また、今年度の成果の一つとして、研究協力者を通して、デンマークの漁業レジリエンス研究グループと接触し、次年度にコペンハーゲン大学で「災害と沿岸コミュニティ:アジアとヨーロッパの視点」というワークショップを開催することが決まった。この会合を通して、国際ネットワーク構築も図りたい。
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