2018 Fiscal Year Research-status Report
Indigenous knowledge and disaster risk reduction: Revitalizing local agriculture and fishing industry in tsunami-hit areas
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17K03270
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00305400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ボレー セバスチャン 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (70751676)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 災害 / 災害人類学 / レジリアンス / 在来知 / 日本研究 / 漁業 / 農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災後の宮城県地域社会の農業漁業の復興過程を民族誌の手法によって明らかにすると共に、住民の在来知が、復興期の災害リスク軽減(減災)研究においてどのような役割を発揮するか探求するものである。今年度は、仙台市七ヶ浜・名取市閖上・山元町等で現地調査をおこないながら、(1)生業技術や社会組織、経営イノベーション(2)宗教・慰霊施設と社会的記憶などに関する民族誌資料を収集を本格的に進めることで、地域社会の在来知がどのようにレジリアンス構築に貢献しているのかを判断するための調査資料を収集するとともに、一部はそれについての考察を行い論文として刊行した。また中間成果発表として、9月17-18日にデンマークのコペンハーゲン大学・コペンハーゲン災害研究センターでワークショップ「災害と沿岸コミュニティ:アジアとヨーロッパの視点」を開催し、本事業に関する国際的ネットワークを構築した。 特に(1)については漁業の実態を把握するために乗船調査を行い、漁業過程や漁業経営、護岸工事、資源配分、生産と販売、さらに在来知についての現場での参与観察・聞き取り調査を行い、漁業復興のにおけるイノベーションを深く理解することが出来た。その一部は動画として収集され、民族誌映画を制作する見通しを立てることが出来た。また防潮堤と漁業活動についても今後調査をする必要があることがわかった。(2)については、災害イベントや災害死が地域社会にどのように記憶されているのか歴史民俗的な側面と同時に、祈念建造物や慰霊活動に関する聞き取り調査を行った。また地元の漁業の歴史と集団的記憶についての民族誌資料を収集することが出来た。 これらをもとに稲作農業復興における在来知、小規模漁業と政策について比較研究、災害死者の慰霊碑の役割等について論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度調査体制を整えたそれぞれのメンバーが、農業漁業復興に係わる実質的な人類学調査を行い、関連する民族誌資料の収集をおこなうとともに、一部は成果を研究発表および論文刊行ということで発信することが出来た。特に昨年度は広域にわたる調査を行ったが、今回は調査地を絞り込むことでより集約的な調査を実現した。 代表者と分担者は同じ大学に勤務しており日常的に研究打ち合わせができた。またデンマーク在住の研究協力者は、2018年4月から東北大学に勤務する体制になり、充実した研究組織となった。 また本研究事業に関連して7本の学術論文、4本の学会・研究会発表、1冊の学術図書の刊行を行ったことも大きい。活発な研究活動を展開できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、災害リスク軽減における在来知の役割について、自然科学的な検証が可能な領域を明確にすることで震災復興政策にどのような貢献が可能か検討する。逆に、在来知のなかには文化的価値として社会が継承するべきものもあり、それを政策がどのように支援できるのかも考えていく必要がある。国際的ネットワークについてはヨーロッパ人類学者との連携を中心にさらに発展させるつもりである。
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Causes of Carryover |
予定していた国際研究集会への旅費について、別予算を用いての派遣が可能であったために、次年度繰越を行った。次年度においては、本テーマに関わり、イギリス・アバディーン大学との共同研究を計画しており、そのための研究打ち合わせ及び国際研究集会をのために旅費に使用する予定である。本事業の成果を生かして、あらために発展的な国際共同研究を開始することができる計画を立てており、そのための必要資金として差額を利用する予定である。
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