2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03271
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山口 睦 山口大学, 人文学部, 准教授 (70547702)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 贈与経済 / 災害支援 / 復興ビジネス / 公的贈与 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本社会を中心とする国内外における災害支援、被災地における復興ビジネスを事例として、世界的に活性化する贈与経済の様相とそこで生まれる新たなコミュニティの生成過程を明らかにするものである。具体的な課題としては、次の3点がある。①国内における災害支援と地域間贈与、②海外における災害支援と地域間贈与、③復興ビジネスと新たなコミュニティ、である。初年度に引き続き、①と③について研究活動を進めた。 本年度は、主に国内において調査を行った。2018年5月には、神戸市において阪神・淡路大震災後に被災者支援を行っているNGO団体に聞取り調査を実施した。2019年2月には、長崎県島原市において雲仙普賢岳噴火に関する施設の調査を行った。同年3月には、淡路島にある北淡震災記念公園を中心に震災についての施設の調査を行った。これらの調査の内容をふまえて、震災後の手作り復興商品にみる被災地性の演出と脱却について、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の事例をもとに論文を執筆した。東日本大震災後に多く生まれた手作り復興商品は、ネーミング、モチーフ、原材料、由来、デザインなどを利用して「被災地性」が演出される。しかし、時間の経過とともに復興商品領域は縮小し、みやげ物として、また一般的な商品として生き残るプロセスをたどる。一般性を備えない復興手作り商品は時間の経過とともに淘汰されていくことが明らかになった。 また、2019年1月に「規範と模範から見る東北アジアの近代化とグローバル化」研究会において「資本主義的イベントが作りだす贈答規範」と題して研究発表を行った。資本主義的動機によって新たに創られたイベントであるバレンタインデーを災害被災者や社会的弱者への寄付に転換する公的贈与について分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題の一つである海外における災害支援と地域間贈与についての調査が行えなかった。台湾やインドネシアなどの海外の被災地における現地調査が実施できなかった。また、戦後の青少年赤十字を通した日米交流の実績についての予備調査がうまく進まず、現地調査を行えなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外における災害支援と地域間贈与について、2009年に台風による土砂崩れで集落が埋没した小林村での現地調査を行う。先住民である平埔族の民族文化である刺繍が行政の支援により復興している様相を調査する。また、戦後にアメリカの青少年赤十字から日本に「ギフト・ボックス」52万個が贈られた。日米の赤十字社でこれに関する調査を行い、事実関係の確認を行う。これらの調査を踏まえて、国外における災害支援と地域間贈与について検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
海外における災害支援と地域間贈与についての調査が進まなかったため、調査費用が未使用となった。次年度において調査を行う予定である。
|