2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03273
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
柄木田 康之 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (80204650)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移民 / 文化的アイデンティティ / 適応戦略 / 自由連合 / ミクロネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は米国とミクロネシア連邦の自由連合協定により可能となった,ミクロネシア移民コミュニティーのホスト社会との共生戦略を民族誌的研究によって明らかにする。具体的には米国グアム島とハワイ島のミクロネシア移民の地域適応の比較研究を行う。現在,米国の移民政策は地域のレベルで移民とホスト社会の軋轢を引き起こしている。一方,ホスト社会の移民への反発や支援が移民社会の文化的アイデンティティに基づく組織化の契機となっている。本研究は移民,支援者,行政の具体的なエージェントの活動を詳細に示すことで,移民が活動する地域社会が特定の局面では同化主義であると同時に,異なる局面では多文化主義的であることを明らかにし,同化主義・多文化主義の二元論を越える理論的貢献を目在している。 Remathau Community of Hawaii(RCH)はミクロネシア連邦ヤップ州離島出身者が米国ハワイ州ハワイ島で形成している移民の非公式的アソシエーションである。ハワイ島においては親族・同郷者の終末医療,葬送儀礼の支援は,ヤップ離島出身者の活動として重要なものであるが,離島出身者師弟の合同卒業記念日が近年重要な活動となっている。この卒業式には地域の学校関係者、ハワイ州教育省関係者が招かれ、伝統的な踊り、伝統技術と紹介とともにアソシエーション師弟の学校教育の成果が誇示される。これはハワイ州でミクロネネシア移民コミュニティーが教育における成功という価値観を共有することを示し、移民に対する偏見に対抗するためである。 この合同卒業式には文化的アイデンティティと同時にホスト社会への適応を目指す複合的戦略が観察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は平成29年8月にミクロネシア連邦ヤップ島に1週間滞在し、在外ヤップ人アソシエーションの現在の活動者・役員の情報収集を行った。その結果,研究計画作成時にはハワイ島在住であったヤップ離島首長会議議長が現在ヤップ島に帰島していることが分かり,その経緯にかかわる情報と今後の調査に関わるアドバイスを得た。また平成29年11月ハワイ島ヒロ地区に1週間滞在し,在ハワイ島ヤップ州離島出身者のインタビューを行い平成26年の前回調査以降のアソシエーションの活動状況について聞き取り調査をおこなった。 これらの調査の口頭発表は第52回日本文化人類学会研究大会(弘前大学),18th IUAES World Congress(Federal University of Santa Carorina, Floanopolis, Brazil)に受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで調査結果の口頭発表を日本文化人類学会研究大会(6月),IUAES World Congress(7月)に実施する。 また研究代表者は平成30年8月にミクロネシア連邦ヤップ島・米国グアムに滞在し、在外ヤップ人アソシエーションの現在の活動者・役員の情報収集を行う。平成29年の調査で,ハワイ島で開始されたヤップ州離島出身者の合同卒業式がグアム島でも開催されることが明らかになっており,その経緯にかかわる聞き取り調査と今後の調査計画に関わる情報収集をおこなう。
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Research Products
(2 results)