2022 Fiscal Year Annual Research Report
Being Indigenous and being migrant: Indigenous Australians and Japanese migrants in northwestern Australia
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17K03275
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山内 由理子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50626348)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本人移民 / オーストラリア先住民 / アイデンティティ / 語り / ミックス / 食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オーストラリア北西部の町ブルームにおける日本人移民とオーストラリア先住民のミックスの子孫のアイデンティティを調査対象とする。ブルームは1880年代から1960年代まで真珠貝採取業の労働力として日本人移民が流入し、現地のオーストラリア先住民とのミックスの子孫を形成した。オーストラリアへの日本人移民史として戦前から続く稀有なグループである。 2017年度から2019年においては、シドニーやパースの文書館等での歴史的背景の文献調査と共に、ブルームにおいてライフヒストリーとアイデンティティに関してのフィールド調査を毎年1-2か月行い、彼らの日系人としてのアイデンティティがブルームの歴史や非日本人側の親族の語りにも支えられてきたことを明らかにした。また、研究者は彼らの日本側の親族訪問にも同行し、親族関係とアイデンティティの流動的な関係を探った。 2020-2022年度には、コロナ禍によりフィールドワークができず、2019年度までに収集したデータを中心に研究の分析を行った。インフォーマントとはメールやSNSを通じてコンタクトを維持した。彼らの語りの分析より、日常生活の微細な側面からのアイデンティティの醸成の重要性が浮上した。2022年度には、中でも食に関する語りに注目した分析を行い、日本人第一世代の食についての語りが、植民地化と労働移民の連続的構造の中での日本人移民と先住民との複雑な関係を表し、重層的にアイデンティティを支えていることを明らかにした。2022年度にはそれに基づき複数の学会発表がなされ、現在論文を作成中である。また、本研究より、日本人移民と現地の先住民のミックスの人々に関して、オセアニア全土における植民地化と労働移動の大きな流れに位置づけて理解する必要性が浮上し、国立民族学博物館の共同研究のプロジェクトを立ち上げた。
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