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2017 Fiscal Year Research-status Report

Studies on Bricolage Practices in Mongolian Pastoral Society

Research Project

Project/Area Number 17K03276
Research InstitutionTokyo University of Foreign Studies

Principal Investigator

上村 明  東京外国語大学, 外国語学部, 研究員 (90376830)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywordsブリコラージュ / アフォーダンス / 日常的実践 / 牧畜 / モンゴル
Outline of Annual Research Achievements

モンゴル国の首都ウランバートルで、2017年7月14日から8月2日に、①過去に調査で長期滞在したことのある、元ホスト・ファミリー(2016年にモンゴル西部ホブド県から首都に引っ越した)の聞き取り調査を中心に、②現地のテレビ・新聞などのメディアや街頭での調査を行った。また、2017年の夏、モンゴルは全国的に降水量が少なく旱魃になった。③それに対して牧畜民がどのように対応しているか明らかにするため、8月11日から23日、モンゴル国中部のボルガン県、トゥブ県、ウブルハンガイ県を周回して、村役場・牧畜民世帯への聞き取り調査を行った。さらに、④別科研で2017年9月と2018年3月に行った西モンゴルでの調査の結果と本科研での知見をもとに、災害時の行政の境界を越えた牧地利用・家畜の移動について考察した。
①の聞き取り調査では、同世帯が牧畜をやめ首都に移動した動機、家畜の処分など引っ越しのプロセス、将来の生活設計について聞いた。その結果、牧畜民であった世帯が自ら操作できる個人的な条件や社会的状況を用いて、自分の将来を組み立てていく過程が明らかになった。②については外国ドラマの受容についてなどのテーマでデータを収集した。③では、移動の回数・距離、馬乳酒づくりや儀礼への影響について、例年との比較を中心に聞き取り調査をした。それにより、旱魃においては、移動の回数や距離が増えるだけでなく、子供の断髪式や結婚式などの儀礼にも大きな影響があり、このような自然イベントに起因して生活全体を構成しなおすことが確認された。④では、行政の境界を越えた牧地利用・家畜の移動は、社会主義時代から行われていたが、90年代以降、行政単位間の協力関係の重要性はさらに増し、カザフ人とのエスニックな境界を越えた個人的な友人関係も構築されることが明らかになった。この結果は、2018年3月の生態人類学会で発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の研究計画書では、本年度の牧畜資源利用の調査として、(1) 移動となぜ移動先を選択したかの聞き取り調査、(2) 旱魃、雪害等の自然災害への対処。とくに、「オトル」移動についての聞き取り調査、(3) 親族関係、牧地や営地の共同利用の関係、家畜の預託を通じた関係についての新しい情報と牧畜経営戦略について量的・質的な聞き取り調査、(4) 移動先の決定における事前交渉や家畜預託、労働力調達など、自然資源および社会的資源獲得のための交渉について、日常の牧畜作業に協力しながらの参与観察、(5) 協同組合の結成や開発プロジェクトの実施によって、どのように新しい協力関係が構築されるか、とくに既存の協力関係に対する影響、それとの相互作用についての参与観察を行う、と設定した。
このうち、(1)から(3)、とくに(2)の旱魃、雪害等の自然災害への対処についての調査は、上記③のモンゴル国中部での聞き取り調査で行うことができた。(4) の自然資源および社会的資源獲得のための交渉の調査については、参与観察に十分な時間をとることができなかったものの、おなじく③の調査で広範囲の定量的なデータがえられた。(5) の 開発プロジェクトの調査は、西モンゴルでの他科研による聞き取り調査で情報をえることができたが、過去の調査の情報からおおきな変化は見られず、新しい知見は生まれなかった。
牧畜資源以外のブリコラージュ的実践の調査については、②でウランバートルでの調査で行ったが、まだ研究対象を探索している段階にある。しかしながら、①の元ホスト・ファミリーの聞き取り調査で、牧畜民から都市民になろうとしている世帯の詳しい調査ができたことによって、牧畜のブリコラージュ実践と非牧畜のブリコラージュ実践との相同性・連続性、その移行の過程を明らかにする重要な情報がえられたと言える。

Strategy for Future Research Activity

つぎの事項に重点をおいて研究を進める。
①新しい調査と既存の調査の記録や統計データを整理し統合する。過去の調査のデータでまだPC入力されていないものを入力し、おなじ調査地で数回行った調査のデータと統合し、調査地間でデータを比較できるようにする。また、移動の聞き取りの際に出てきた地名をGIS化して地図上に落とす作業を徹底し、牧畜民世帯の移動マップを作製する。これら牧畜の調査で得られたデータを用いて、牧畜移動の回数・距離等と、家畜の頭数、収入等、家計の諸要素がどのような相関関係にあるか統計分析を、聞き取り調査の情報と照合しながら行う。
②参与観察に時間をとり、10~20日間の比較的長期滞在の調査を、西モンゴルの牧畜地域の調査地で行う。牧畜の現状は常に変化しており、現場の感覚をつかんでおくことは重要である。参与観察と聞き取り調査を組み合わせることによって、統計データや調査票調査だけでは明らかにならない、実践者の感覚と内的な論理を明らかにすることができる。
③モンゴル社会におけるブリコラージュ的実践のリストを作成する。自動車のドアノブを利用した鍋蓋の把手など数行の記述の事例から、モノ作り、さらには贈収賄、SNSに至る多様な場面を記述する。とくに、首都ウランバートルにおいて、住居・店舗の空間利用、食器や調理器具の使用、求職、贈収賄、HIP HOPなどのテーマでデータを集める。それによって、牧畜のブリコラージュ実践と非牧畜のブリコラージュ実践との相同性・連続性を明らかにする。
④牧畜の移動をブリコラージュ的な実践としてとらえる理論的な問題をあつかった論文を発表するとともに、牧畜を伝統的な生業とするモンゴル社会において、ブリコラージュ的な性格をつよくもつ牧畜以外の実践をテーマにした小論を発表する。また、⑤ほかの研究プロジェクトの調査と相乗効果が生まれるように、調査の方法と地域を選ぶ。

Causes of Carryover

当初、海外仕様のノートPC(英語キーボード)とGPSを購入予定であったが、仲介業者の手数料が購入費の約30%と高額であったため、自費で海外より直接購入した。代わりに、タブレット端末と図書を購入したが、上記の次年度使用額が生じた。2018年度で図書の購入と謝金の一部に充てる予定である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2018 2017 Other

All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 3 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Invited: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Int'l Joint Research] モンゴル科学アカデミー歴史研究所/モンゴル科学アカデミー地理学研究所/ホブド大学(モンゴル)

    • Country Name
      MONGOLIA
    • Counterpart Institution
      モンゴル科学アカデミー歴史研究所/モンゴル科学アカデミー地理学研究所/ホブド大学
  • [Journal Article] 20世紀前半のモンゴルの宣伝ポスターにおける日本イメージ2018

    • Author(s)
      上村明
    • Journal Title

      Mongolian and Northeast Asian Studies

      Volume: 3 Pages: 81-92

    • Open Access
  • [Journal Article] 適応する「主体」―モンゴル国牧畜民の世帯構成から2017

    • Author(s)
      上村明
    • Journal Title

      文化人類学

      Volume: 82-1 Pages: 14-34

    • DOI

      10.14890/jjcanth.82.1_014

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] Mongolyn Hoshuu Nutgiin Zurgiin Huvisal, Dursleliin Uurchilt2017

    • Author(s)
      KAMIMURA, Akira
    • Journal Title

      Mongol Sudlal ba Togtvortoi Hugjil

      Volume: 2 Pages: 61-67

    • Open Access
  • [Presentation] エスニック境界を越える牧畜民の協力-モンゴル国西部におけるその歴史・制度・生態2018

    • Author(s)
      上村明
    • Organizer
      生態人類学会23回研究大会
  • [Presentation] Aimag, Hoshuu Nutgiin Zurag Uildeh Chin Ulsyn Zarlig, Durem ba Mongolchuudyn Oroltsoo2017

    • Author(s)
      KAMIMURA, Akira
    • Organizer
      Mongolian Maps and Toponymy
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] VISUAL IMAGES OF THE JAPANESE IN MONGOLIA (First Half of the 20th Century)2017

    • Author(s)
      上村明
    • Organizer
      ユーラシアにおける日本とモンゴル
    • Int'l Joint Research / Invited
  • [Remarks] 研究業績一覧

    • URL

      http://mongol.tufs.ac.jp/kamimura/

URL: 

Published: 2018-12-17   Modified: 2022-02-22  

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