2021 Fiscal Year Annual Research Report
The Anthropology across the Borders: The Formation of Hadhrami Network in the Western Indian Ocean World
Project/Area Number |
17K03281
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝田 郁 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任助教 (00780420)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハドラミー / ザンジバル / アラブ首長国連邦 / 移民 / ネットワーク / エスニシティ / 母語 / イスラーム復興運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハドラミーと呼ばれるアラブ移民の再移住者による、インド洋西部地域におけるネットワーク形成の解明を課題としている。今期が最終年度であったが、新型コロナ感染症の状況が改善せず、予定していた中東・アフリカでの調査ができなかった。そこで渡航調査に代えて、これまで収集した移民のライフ・ストーリー、映像・文献資料等の分析と、リモートでの追加取材をおこない、本研究の総括を進めた。 研究計画では、①ネットワークの形態、②移民コミュニティの成り立ち、③イスラーム的な価値観の共有、④母語としてのアラビア語の4課題を設定した。①については、アラビア半島をハブとしたインド洋周辺地域との放射状のネットワークと、拡散または集中の一方向的な人の動きを想定していた。しかし実際のネットワークは網目状であり、ホスト社会への定着後も移動が繰り返されていた。②については、ハドラミーとしてのエスニシティと、再移住前の旧ホスト社会が共通するという、2つの要素から移民コミュニティが形成されていた。興味深いことに、前者より後者の意識が優先される状況も見られた。③については、旧ホスト社会の住民と移民の統合に、イスラーム的な価値観が一定の役割を果たしていた。一方で新ホスト社会では、宗教実践が人々の紐帯となる事例は確認できなかった。④については、口語アラビア語の違いがコミュニティの統合と分断という相反する側面を生み出していた。この言語状況は、移民社会におけるオールドカマーとニューカマーの関係性に重なっていた。 5年の研究期間において、移民を取り巻く環境変化の速度は予想を超えていた。今回明らかになった状況も、時間の経過とともに大きく変わる可能性がある。また、移民社会のオールドカマーとニューカマーという、コミュニティ内の新たな関係性も明らかになったことから、これからも引き続きハドラミー移民の動向を追って研究を続けていきたい。
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Research Products
(3 results)