2018 Fiscal Year Research-status Report
香港のイスラーム・ブームとムスリム社会の「周縁化」
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17K03282
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
王 柯 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80283852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 香港 / イスラーム / 改宗者 / 相対的貧困 / 一国二制度 / 宗教観 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度において、二回にわたって香港現地でフィールド調査を実施した。これまでの調査と文献研究を踏まえ、今年度の研究は主に香港イスラーム連合会、香港林士徳イスラームセンター、香港ムスリム青年協会が設置されている愛群道モスクを拠点に、年齢、性別、職業、改宗時期を基準に7人のイスラーム改宗者に焦点を絞り、それぞれに対して長時間(4~8時間)のインタビュー調査を実施した(女性の場合、関係者が立ち会いのもとで行われた)。 この調査を通じて、改宗を促した個人的、家庭的、社会的、経済的、政治的要因を詳細に把握することができたため、そこからイスラーム改宗はそれぞれその中国認識(特に2014年の香港反政府デモ―傘革命以降の香港中国関係を背景に)、中国政府と香港政府の宗教政策におけるイスラーム政策、香港社会の人間関係と社会問題、個人の家庭環境(特に経済事情)、そして個人のこれまでの宗教経験、学歴と職歴教育事情に関係することを判明し、しかも一定の規則があることを把握した。それについては現在分析しながら改宗の原因を分析する論文を執筆しているところである。 そのほか、調査期間中に、香港ムスリムによるチャリティー行事、あ新たな改宗者を受け入れる儀式にも出席することが許され、これを機に様々な年齢と背景をもつ香港ムスリムに接触することができ、彼らの中国認識、中国政府と香港政府の宗教政策に対する見方、香港社会の人間関係と社会問題についての考え方などについてもある態度把握することができた。これは現在執筆している改宗の原因を分析する論文の背景資料となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、7人の改宗者との長時間のインタビューを通じて、改宗する原因について具体的に把握者することができため、その深層にある思想的、社会的、経済的、政治的、宗教的理由について思考を深めることができた。 2、この調査を通じて、調査協力者との間に友好的な関係を築いたため、インタネットーを通じて定時的に連絡することもできている。例えば、2019年4月28日に香港で市民による「中国との引き渡し条約」締結に反対する大きなデモが起こり、29日に現在調査協力者の参加状況等についてすぐに把握することができた。 3、論文の執筆がやや遅れているが、これは昨年中に二回の被災によるものであり、現在すでに災害前のペースに戻っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1、インタビューで得た資料を入念に解読し、分析する。 2、研究論文また研究レポートの執筆に集中し、今年度中の活字化を目指す。 3、論文執筆を踏まえ、調査内容を充実させるために、可能であればさらに範囲を広げて引き続き調査を実施する。 4、学会等を利用して、研究手法と成果の交流を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
研究を継続するため、総額788,714円の研究費を使用する。前年度の残額88,714円は本来調査の旅費だったが、家が二回被災したため夏の調査は遂行できなかったため生じた。 1、12月と3月において二回にわたって香港現地で調査を行うための旅費55万円;2、調査協力者への謝金は8万円;3、関係図書資料の購入5万円;4、学会報告の旅費108,714円
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