2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Islam Boom in Hong Kong and Marginalization of Muslim Society
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17K03282
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
王 柯 神戸大学, 国際文化学研究科, 名誉教授 (80283852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 香港 / イスラーム / 改宗者 / 相対的貧困 / 社会周縁 / 一国二制度 / 民主化運動の弾圧 / 自由からの逃走 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はフィールドワーク調査に基づくと想定したものである。しかし民主化運動の鎮圧と国家安全維持法の導入、そしてパンデミックによる入国禁止は2022年末までに続いた。23年2月に入国が許された台湾で、香港から移住してきたウラマ、元区議員、香港市民を訪問し、イスラーム社会は新たな局面を迎えたことが分かった。 1,2019年10月の「九龍モスク事件」によって、政治参加を極力避け、敬遠されてきた香港のイスラーム社会は大衆の視線に担ぎ出され、政治姿勢が問われた。政府との関係維持を優先しイスラーム社会は事件を追及しなかったため、市民の不信を深め、いっそう敬遠される結果を招き、イスラーム社会はさらに周縁化された。 2、華人男性の改宗は、香港のイスラーム社会によるイスラーム≠テロリズムの宣伝が功を奏した証だ。しかし宗教に敵視的である中国政府はイスラームに対する不信感を隠さず、イスラーム社会に対する関与を強め、重ねて中国政府への服従の表明と「イスラームの中国化」を求めた。これに嫌気がさしたウラマや一般信者は香港を脱出した。 3、香港はかつて中国大陸と海外のイスラーム社会の交流窓口であり、イスラーム団体は市民のイスラームに対する誤解を溶くため宣教活動を積極的に行った。国家安全法の導入以降、中国政府の政治迫害を恐れて、宣教活動はすべて無くなり、宗教行事の連絡以外、ホームページの更新もすべて2020年の時点で止まった。民主主義の後退に伴ってイスラーム社会も活気を失った。 4,専制体制の下、無力感、孤独感、不安感と劣等感を持つ社会的弱者が、「争教不争国」の政治から逃げる伝統があるイスラームへの改宗を通じて現実社会から「逃避」できるような「聖なる空間」はもはや存在しない。 研究成果の一部を共著『ハイテク専制国家・中国』に反映、清華大学秦暉教授を招聘して中国の「戦後」言説の虚構性について公開講演会を開いた。
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