2018 Fiscal Year Research-status Report
再生産労働の国際分業における男性移住者の社会関係とアイデンティティの再構築
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17K03285
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長坂 格 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60314449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生産労働の国際分業 / 男性性 / ヘルスワーカーの国際移住 / 移住家事労働者 / フィリピン / イタリア / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、看護師、介護労働者、家事労働者といった再生産労働に従事する男性移住労働者に着目し、看護師として就労する移住者が多いイギリスと、家事労働、家庭介護に従事する移住者が多いイタリアで調査を実施し、それぞれの移動経験を比較検討することを通して、これまで女性の移動経験を中心に論じられてきた「再生産労働の国際分業」の議論を複雑化することを目的としている。 2018年度は、まず、前年度に実施したイギリスのフィリピン系男性看護師、介護労働者、その他様々な職に従事する男性移住者に関する聞き取り調査資料、およびイタリアのフィリピン系男性家事労働者に関する聞き取り調査資料の整理と検討をおこなった。前者のイギリスについては、対象者には、看護師としてイギリスにきた男性、看護師あるは介護労働者の妻による呼び寄せでイギリスにきて、看護助手やその他の病院関係の仕事に従事する男性が含まれる。両者の就労経験理解には違いが認められ、イギリスにおいて広義の再生産労働に従事する男性移住者の移動経験が差異化されている様相に着目する必要性が示唆された。後者のイタリアについては、対象者の移動経験理解における、経済危機以降におけるイタリアの家事労働市場の変化、男性性観念と国際移住がもたらすアイデンティティ、あるいはパーソンフッドの変容との関係、故郷での諸行為を考慮することの重要性が示唆された。 また2018年12月には、イタリアへの多数の移住者を送り出しているフィリピン北部の町で調査を実施した際に、移住労働者の故郷での諸行為に関する参与観察、またイタリアへの男性移住労働者への、イタリアでの就労経験についての補足的な聞き取りを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリスとイタリアの調査はほぼ終了している。最終年度では、フィリピンでの統計資料調査および送り出し政策に関する調査と並行して、成果の公表を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、イタリア、およびイギリスにおいて、広義の再生産労働に従事するフィリピン系男性移住者労働者を中心に聞き取り調査をすすめてきた。最終年度は、まずはそれぞれの事例の考察を行い、成果公表に努め、さらにそれぞれの考察結果の比較へとすすめていく予定である。また、フィリピンでの統計資料調査、送り出し政策に関する調査と文献調査を実施し、特にイギリス在住の男性移住労働者の移動経験の歴史的文脈に関するいくつかの情報の欠落を補いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度に予定していたイタリア調査を、前年度のイギリス調査の終了後の3月末に実施したことで、旅費を節約することができた。次年度使用額は、最終年度に予定されているフィリピン調査のための旅費として使用する計画である。
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