2017 Fiscal Year Research-status Report
縄文文化の現代的利用におけるローカリティとナショナリティの節合様態の人類学的研究
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17K03287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (50183934)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 先史文化 / 縄文文化 / ローカリティ / ナショナリティ / 世界遺産 / オリンピック |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ.「縄文コンテンポラリー展inふなばし『とび博でアートみぃーつけた』(船橋市飛ノ台史跡公園博物館)の実地調査。①[2017.7.23]同展の準備過程を約5か月間実行委員会メーリングリストにより調査し、7月23日に同博物館で展示および「縄文アートまつり」の調査。②[2017.7.30]同展の「縄文座談会」で同博物館開設当時の経緯ならびに参加アーティストについて調査。③[2017.7.31]本年は船橋市制80周年記念の協賛行事でもある同展の市の文化(財)行政における位置づけ等について、市教育委員会において調査。 Ⅱ.長野県茅野市において『第0回八ヶ岳JOMONライフフェスティバル』を調査。 ①[2017.10.6]茅野市民館・茅野美術館において学芸員と広報担当への聞き取り調査およびフェスティバル関連展示の調査。②[10.7]尖石縄文考古館において「宮坂英弌記念尖石縄文文化賞受賞者講演」ならびに「縄文文化大学講座」を聴講し、「尖石縄文の里 夜の火祭り」を参与観察調査。③[10.8]終日「尖石縄文まつり」調査の後、学芸員から同フェスティバルについての考古学的見地からの情報収集。④[10.9]同フェスティバルの一環のワークショップにより建設された竪穴式茶室「低過庵」および関連建造物を見学の後、尖石縄文考古館において「土偶の日記念対談」を聴講。⑤[10.10]市内の展示物調査の後、市役所「縄文プロジェクト推進室」において、同プロジェクトおよび、本フェスティバルの位置づけについて聞き取り調査。 Ⅲ.東京国立博物館で開催中の「フランス人間国宝展」において、日本の「人間国宝」制度に倣ったフランスの無形文化財認定制度について調査[2017.10.10] Ⅳ.マスメディア、インターネット等により、各地の縄文関連ニュースについて調査するのと並行して、先史文化の現代的利用について文献研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「縄文ルネサンス」とさえ呼びうるような、日本各地で近年みられる「縄文文化の現代的利用」の急速な活発化の実態について、文化人類学的調査によって具体的かつ詳細に明らかにすることを目的としており、国内5地域(および海外2地域)を実態調査を行う重要拠点としている。平成29年度には、その5地域における短時日の調査および、マスメディア、インターネット、メーリングリスト、Eメール等を通じての情報収集により、切れ目のない「実態調査」を計画していた。現地調査としては、国内2地域(千葉県船橋市、長野県茅野市)における調査のみを実現することができたが、それぞれにおいて充実した調査成果を得ることができた。 千葉県船橋市飛ノ台史跡公園博物館の「縄文コンテンポラリー展」を焦点とする調査では、準備段階から記録作業までを含む各年の調査を10年以上継続してきた蓄積の上に、市制80周年を機に行政へも視野を広げて、遺跡をめぐる文化財保護行政についても価値ある知見を得ることができた。 長野県茅野市の「縄文プロジェクト」を中心とする調査においては、市の総力をあげて満を持して開催された「八ヶ岳JOMONライフフェスティバル」の主要行事を5日間にわたって集中的に調査することができ、官民一体で進めている「縄文プロジェクト」の多面的な広がりについても詳細かつ具体的な情報を得ることができた。 新聞等のマスメディアやインターネット等によっては、本研究の重点対象としている5地域をはじめとして全国における縄文を活かす様々な取組みについて膨大なデータベースを構築しつつあり、飛ノ台史跡公園博物館の「縄文コンテンポラリー展」については、実行委員会メーリングリストを通じて準備過程の詳細をモニターできており、現地調査と「遠隔」実態調査が車の両輪として相補的に効果をあげている。 以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、マスメディア、インターネット等をつうじた情報収集および先史文化の現代的利用についての文献研究を継続することとならんで、以下のように多面的な実態調査を実施する計画である。①連合王国において一週間程度の実地調査を行い、大英博物館における縄文文化関連展示および(ストーンヘンジ等の)先史文化遺跡の展示の実態について現況を把握する。②「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産認定に向けての動きを詳細にモニターし、(国内推薦の成否を問わず)岐路に立つ推進運動の現状について、青森市、八戸市、一戸町などにおいて実態調査を行う。③新潟県の信濃川流域を中心とする「信濃川火焔街道連絡協議会」や「NPO法ジョーモネスクジャパン」の活動について、新潟県および東京都において、特にオリンピックにおける縄文文化の世界発信との関連について調査する。④船橋市における縄文文化の利用の実態について、特に建設予定の市立美術館との関係を視野に入れて、「縄文コンテンポラリー展」について調査を継続する。⑤「縄文ZINE」という小冊子を発行している団体や、縄文関連各種イベントを開催している「NPO法人JOMONISM」をはじめとして、インターネットなどを駆使して展開されている縄文文化の現代的利用の実態を調査する。⑥本調査の中間報告を論文としてまとめ公表する。
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Causes of Carryover |
平成30年度には、本調査にとって重要であり実地調査を必要とするつぎのような多くのイベント等が開催されることが期待されるため、初年度の予算を繰り越して、それらのイベントに関連する催事や活動をカバーすることのできる機動性の高い調査活動を行うことができると判断した。①夏に東京国立博物館で縄文国宝6点が勢揃いする特別展「縄文―1万年の美の鼓動」の開催が予定されている、②昨年度まで5回連続で国内推薦の選から漏へいれた「北海道・北東北の縄文遺跡群」が推薦を勝ち取る可能性が高いことが予想されている、③東京オリンピック・パラリンピックの準備が本格化するなかで(聖火台のモデルとして火焔型土器が採用されるなど)縄文文化の世界発信計画の立案が見込まれる。
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Remarks |
西日本新聞紙上において「縄文ルネサンス」という連載記事を7回に分けて掲載し、現段階までの調査で得られた資料に基づいて、縄文文化の現代的利用の多面的広がりについて一般市民に公開した。(2018.3.6-3.16)
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Research Products
(1 results)