2018 Fiscal Year Research-status Report
在朝日本人の土地所有に関する実態分析とデータベースの構築―韓国大邱市を中心に
Project/Area Number |
17K03288
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
申 鎬 九州大学, 韓国研究センター, 学術協力研究員 (10701469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 朝鮮半島 / 在朝日本人 / 日本統治期 / 大邱市 / 土地台帳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、日本統治期に作成された韓国大邱市の旧土地台帳をベースにし、個人レベルでの土地所有に関する具体的な実態を通じて在朝日本人の歴史を記録・解明するとともに、そのデータベースを構築しようとするものである。 ①30年度は、主に、大邱市の旧土地台帳からの在朝日本人関連データ収集を重点的に行った。というのも、現在、韓国社会は個人情報に対する関心の高まりに伴う行政資料の閲覧条件が厳しくなる傾向があり、早いうちにできるだけ多くのデータを確保するためであった。具体的には、大邱市の旧土地台帳を保管している行政機関(大邱市中区庁、西区庁、北区庁、南区庁、釜山国家記録院)を訪問し、旧本町周辺の西門路地区をはじめ、北区、南区の土地台帳を約15,000件閲覧し、そのうち2,564件の在朝日本人関連データを確保した。 ②土地台帳から得られた情報をもとに、大邱市の旧日本人居住地をフィールドワークし、現状(建物の保存状態、現在の用度、土地や建物にまつわる出来事及び エピソード、取り壊し時期及び理由など)を把握するとともに、現在でも旧日本人居住地の様子が確認できる、郡山市、木浦市、大場村を現地調査することによって、大邱市の旧日本人居住地の歴史(日本統治期から現在まで)の記録・解明に努めた。 ③また、国会図書館、大邱市市立図書館、慶北大学図書館、釜山市民図書館などを訪問し在朝日本人関連資料を収集するとともに、幼い頃に大邱市に住んでいた3人の在朝日本人にインタビュー調査を実施し、旧日本人町の様子と経験を収めた。 ④以上の研究成果は、資料集の発刊のために分析・整理作業を行っており、今後の調査結果を合わせてデータベースを構築し公開する予定である。また、一部の結果をまとめて、現在、「(仮)戦時期(終戦前後)における在朝日本人の土地所有権移動」というタイトルで論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において最も重要な作業である韓国大邱市の旧土地台帳調査は、大邱市の各区庁及び釜山国家記録院(大邱市の旧土地台帳の一部が釜山国家記録院へ移管)の積極的な協力により順調に進んでいる。ただし、最近韓国の行政機関における個人情報管理をめぐる意識が高まっており、行政資料においても閲覧条件が厳しくなる傾向があるので、今後、早いうちに多くのデータを確保できるように努めるつもりである。 また、30年度は、調査を継続するための調査協力者や情報提供者の人的ネットワークが広がり、大邱市の中区地区に集中していた土地台帳調査を、西区、北区へと拡大し形で行うことができた。 関連資料の収集においても、文献資料調査、フィールドワーク、インタビュー調査を通じて新しい資料を多数確保しており、今後在朝日本人及び日本統治期における大邱府関連研究への新しい視点が提示できるよう に努めるつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
1)土地台帳に基づく関連情報の収集記録調査の継続:本研究課題は、土地台帳を基本ベースにし、在朝日本人の実態を明らかにし、デー タベースを構築しようとするものである。それゆえ、土地台帳を閲覧し、関連情報収集調査を行うことは最も重要な作業である。よって、31年度においても前年度に引き続き、大邱市及び釜山国家記録院に保管されている土地台帳を調査し、関連情報収集調査を行う。 2)フィールワークによる旧日本人居住地の現状を記録: 土地台帳に基づく関連情報の収集記録調査の結果と地籍図を照らし合わせて、旧日本人所有地の現状を確認・記録する。具体的には建物の保存状態、現在の用度などを記録し、周辺インタビューを通じて土地や建物にまつわる出来事及び エピソードなどを収集する。 3)大邱の旧日本人町に関する文献及び関連資料の収集(韓国・日本): 在朝日本人所有の実態解明により充実をはかるために、対象地及び大邱市の旧日本人居住地に関する文献及び関連資料を収集する。日本国内にある文献資料を活用するとともに、大邱市市史編纂委員会、大邱市立図書館、国史史料編纂委員会、国家記録院、国立国会図書館などの韓国国内の関係機関に保管している資料を収集する。さらに、これまで申請者の在朝日本人調査経験の中で確保している大邱出身の在朝日本人のインタビュー調査を実施して情報収集を行う。 4)調査成果のデータベース化作業:研究の結果を今後関連研究者が活用できるように収集資料を整理し、データベースの構築作業を行う。 5)学会での発表及び論文投稿(学術的還元):30年度は調査資料の量が増えその分析と整理に追われて学会発表及び論文投稿が遅れているが、31年度はより多くの研究成果を日本と韓国の学会などを通じて発信し、積極的に学術的還元をはかる。
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Causes of Carryover |
31年3月に予定していた海外資料調査(韓国釜山国家記録院での土地台帳調査)の日程が個人的な事情により実施できなかったため。資料調査の旅費として使用するつもりである。
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