2018 Fiscal Year Research-status Report
日本軍の皇民化政策と対日ムスリム協力者の記憶:植民地経験の多声的民族誌
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17K03290
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
澤井 充生 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (20404957)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植民地人類学 / 皇民化政策 / 回教工作 / 歴史記憶 / イスラーム社会 / 中国ムスリム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本軍の皇民化政策を経験した中国ムスリム(回民)に注目し、彼らおよびその遺族の記憶および言説を歴史民族誌として記録・保存することにある。具体的な方法として、日本軍の皇民化政策を経験した回民とその遺族の記憶および言説を口述資料として収集し、現地の情報提供者や研究者の様々な解釈を盛り込みながら、多声的民族誌の記述・共有を目指す。 2018年度は北京市において文献調査およびインタヴュー調査を実施した。北京市では回族の代表的な集住地域(例えば、牛街、馬甸)を訪問し、清真寺関係者(宗教知識人、郷土史家)の協力を得て、清真寺の歴史と現状を把握するとともに、日本軍の植民地支配を見聞きしたことがある住民について情報交換をおこなった。現在、日本軍に直接関与した回民の大多数が逝去してしまっているが、日本軍占領期の北京回民社会(例えば、回民の伝統的なハラール産業)に関する文献資料が有志によって執筆・編纂・出版されており、郷土史家を中心とする有志との意見交換をつうじて、近現代中国における北京回民の記憶や経験を理解するに有益な文献調査を実現させることができた。 今後は最終年度に相当する2019年度に、北京市だけでなく、内モンゴル自治区フフホト市においても同様の現地調査を実施し、日本軍の植民地支配を経験した回民の人々の口述資料を収集し、そうした口述史の意味を近現代中国における回民社会の変容と関連づけながら検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、当初の予定通り、中国国内の調査地において中国共産党・政府関係者や回族研究者から多大な協力を得ることができ、文献調査およびインタヴュー調査を効率的に実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度にあたるが、中国国内の調査地において中国共産党・政府や教育機関の協力者とともに緊密な連携関係を維持しながら現地調査を実施し、その調査・研究成果を学会・研究会において発表して学術的な議論の深化を目指し、また、最新の調査・研究成果を社会的に換言することを予定している。
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Causes of Carryover |
2018年度は他大学の科学研究費補助金(基盤B)プロジェクトの研究分担者として外国出張を実施したため、本科学研究費補助金による当初の出張計画を変更せざるをえなくなった。そのため、年度計画における日程調整が容易ではなくなり、最終的に、次年度(2019年度)に残額を執行することに決めた。 2019年度は最終年度にあたり、本研究課題の成果を総括しなけれならない。科学研究費補助による研究会の開催、成果報告書の冊子刊行を念頭に置き、本研究課題を予定通り遂行する予定である。
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