2017 Fiscal Year Research-status Report
Consuruction of Nationality and Ethnicity in Multi-ethnic State: Indian Diaspora in Malaysia
| Project/Area Number |
17K03293
|
|---|
| Research Institution | Kaichi International University |
|---|
Principal Investigator |
古賀 万由里 開智国際大学, 国際教養学部, 講師 (20782345)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
| Keywords | 文化人類学 / マレーシア / インド系住民 / ヒンドゥー寺院 / タミル学校 / NGO / セランゴール州 / 開発 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
マレーシアで宗教的マイノリティであるヒンドゥー教徒の寺院が、開発事業の中で破壊や転移対象となっている原因をセランゴール州の住民から聞き取り調査したところ、1）エステート時代に建てられた寺院は、独立後土地の所有者がイギリス人からマレーシア人となったため土地を失った、2）寺院の多くは正式に登録されていない、3）国有地や私有地に不法に建てられているということがわかった。
またセランゴール州に現存するヒンドゥー寺院10か所を対象に調査した寺院の関係者の聞き取り調査により、破壊を免れたケースの特徴として以下の点が明らかになった。1）経済的に安定した商業カーストまたはエステート近郊新興住民が委員会を結成し、運営に成功している、2）政府に観光地と認定され、政府の資金援助を受けている、3）市議会議員や人権NGOの働きがあった、4）開発を防御する神霊の存在が、土地所有者や開発業者（非マレー系）に認められた。
さらにインド系の国会議員、教育省副大臣、市議会議員、NGOメンバー、活動家、土地財政協同組合社長、大学研究者らに、インド系住民と関係の深い三大施設である、寺院、タミル学校、NGOの現状と展望、および政府の出しているMIB（Malaysian Indian Blueprint)の計画性と実行性についてインタビューを行った。タミル語学校は寺院と同様、エステートに作られたが、開発が進むと廃校となる学校が相次いだ。マレー学校に比べ施設が不十分であり、進学に不利なタミル学校への支援は、政府やNGOにとって課題となっている。NGOに関しては、政府から基金を受け取っても有効活用していないという批判の声もあがった。MIBへの見解は、政府のプロパガンダであり実効性はまだ発揮されていないが、インド系住民に利益をもたらすであろうと見る人と、変わらないと見る意見に分かれ、現状では判断しかねるようである。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の調査計画である、寺院についての存続状況の調査に関して、セランゴール州の複数の寺院で調査を行い、様々な問題点と課題を把握できた。係争中の寺院問題は当人たちにとって微妙な問題であるが、内部関係者から開発に抵抗したプロセスを聞くことができ、寺院存続理由を知ることができた。
また本研究の課題である寺院、学校、NGOに関して政府・非政府関係者から見解を知り、今後の研究調査の指針を得た。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きセランゴール州内にあるヒンドゥー寺院を調査し、現在にいたるまでの問題点や存続へのプロセスを明らかにしていく。特にイスラーム都市としての開発が進んでいるシャーアラム市のヒンドゥー寺院が、周囲の圧力にいかに対抗しながら存続しているのかをみていきたい。
また、タミル学校の現状について、カリキュラム、シラバス、進路などを調べ、マレー学学校との比較を行っていきたい。
NGO調査も引き続き行い、インド系住民の人権、宗教、教育の関わるNGO関係者から、活動内容とインド系住民の生活向上への影響を調べていく。
ヒンドゥー寺院の調査結果に関しては、6月に東京で行われる「宗教と社会」学会大会と、8月にマレーシア・ランカウイで開催されるInternational Malaysia Studies Conference にて発表する予定である。
|
| Causes of Carryover |
年度末に調査を行った際、旅費と人件費の申請が遅れたため、次年度に繰り越された。
|
Research Products
(1 results)
