2018 Fiscal Year Research-status Report
東ティモールにおける社会的紐帯の生成と維持に関する人類学的研究
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17K03304
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
上田 達 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (60557338)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東ティモール / 人類学 / 都市集落 / 和解 / 青年の十字架 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は文献研究と現地調査を行った。現地調査は8月20日から9月4日にかけて約二週間、東ティモールに渡航して実施した。東ティモールでは「青年の十字架」について、聞き取り調査を行った。さまざまな出身地から来る人々が集まるディリの都市部において、「青年の十字架」と呼ばれる信心業が社会的紐帯の創出と維持のために重要な役割を果たしていることが、前年度までの調査で確認されたため、これに関する情報を収集した。モニュメントが多く残る内陸部のエルメラ県と、最初に信心業が行われたバウカウ県を訪問して、カトリック教会関係者を中心にインタビュー調査を行った。また、ラウテム県のカトリック教会関係者で、導入に際して中心的な役割を果たした人物ともディリでコンタクトすることができたため、インタビュー調査を行った。これらの聞き取り調査を通じて、「青年の十字架」の導入の経緯やその背景に関する情報が得られた。 二年目までの調査の成果は、2018年5月の東南アジア学会第99回研究大会のパネル「東南アジアとアフリカの移行期正義とその後-和解と社会統合をめぐる比較検討」で口頭報告を行うとともに、カンボジアなどの他地域の専門家と意見交換を行った。また、2018年7月にはブラジリアで開催された An International Conference of Timor-Leste Studies Association -Brazilian Chapterで報告を行い、オーストラリアやブラジルの研究者らと意見交換することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記したとおり、関連する情報は蓄積されつつある一方で、研究遂行のためにいくつかの点で支障があったことは否めない。まず、2018年度は、校務との関係で2018年夏期の渡航しかできなかったため、調査のための十分な滞在期間が確保できなかった。また、現地調査の際に、大規模な道路補修工事が行われていたため、東部への移動が制限された。そのため、予定していた地方都市での調査を断念せざるを得なかった。時間的制約の中で、地方都市への調査と都市部での聞き取り調査を並行して実施していくことが三年目以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目以降は、引き続き現地調査を実施しつつ、研究成果の公表に努める。現地調査は、都市集落住民の地方に住む家族との社会的関わりについてのデータを重点的に収集したいと考えている。特に「青年の十字架」をめぐる情報の伝達に注目していきたい。研究成果の公表については、口頭報告に補足と改稿を加えて、学術雑誌に投稿する準備を進める。
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Causes of Carryover |
2018年8月~9月の調査日程を、想定していたよりも三日ほど短縮したため。2019年度は滞在期間を確保できる見込みのため、繰越額と2019年度予算額と合わせて、旅費として執行する予定である。
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