2019 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Studies on the coastal resource use and harmonious coexistence between fisheries and protected animals in the Dungonab Bay MPA, Sudanese Red Sea Coast
Project/Area Number |
17K03308
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
中村 亮 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40508868)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生態・環境 / 漁民文化 / ジュゴン / 海洋保護区 / 紅海 |
Outline of Annual Research Achievements |
スーダン紅海北部ドンゴナーブ湾海洋保護区の、漁民とジュゴンの海域利用特性を「文化人類学」と「動物生態学(バイオロギング)」より解明し、漁業を極力妨げないジュゴン混獲防止策を発見する。それをもって、乾燥熱帯沿岸域における安定した生産活動による住民生活の改善と向上に資する「漁民とジュゴンの共存型海洋保護区モデル」を創出することが本研究の目的である。最終年度は、スーダンの情勢悪化により、調査地(紅海州ポートスーダン)が外務省による「渡航中止勧告」地域となってしまったため、ドンゴナーブ湾海洋保護区での現地調査は実施できなかった。その代わりに、紅海大学の共同研究者とインターネットを通じて、情報交換と本研究成果のまとめ確認、論文執筆の準備をおこなった。同時に、ドンゴナーブ湾海洋保護区の住民生活の向上と改善のために今後必要となる、漁村の「経済互助組織」について、同じくイスラーム漁村であるタンザニア南部キルワ島にて現地調査を実施した(情勢悪化時にキルワ島を代替調査地とすることは申請書に明記)。その結果、マイクロファイナンス(MF)型の経済互助組織が近年タンザニア沿岸部に導入され始めたが、イスラーム社会では「利子」が発生するMFが当初敬遠される傾向にあったことが分かった。利子が発生しない経済互助組織として「頼母子講」がある。キルワ島では、伝統的な頼母子講に新出のMFの仕組みを取り入れ、新形態の頼母子講型経済互助組織が複数作られるなど、住民の生活改善への創造力と実行力は高い。さらには、互助組織を基盤としたキルワ島独自の「漁業連合」の構想まで立ち上がっている。今後ドンゴナーブ湾MPAを住民参加主導型で持続的に運営してゆくことを考えるとき、何らかの住民組織が必ず必要となってくるであろう。その際、キルワ島の経済互助組織を基盤とした漁業連合のアイデアは、同じイスラーム漁村の事例として参照可能である。
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