2017 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological Research on social relationship building among Japanese residents, Korean immigrants, and Filipino migrants at Higashikujo in Kyoto.
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17K03310
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
永田 貴聖 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 外来研究員 (80551093)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複数エスニシティ・ナショナリティ / フィリピン人 / 在日コリアン / 東九条 / カトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度、本研究では、京都市・東九条地域を集住地域とする在日コリアン、日本人、フィリピン人移住者の関係に焦点を当てた。 なかでも、研究計画調書などで示した3つの過程のうちの1つを重点的に考察した。具体的には、多文化交流サロンに集まるフィリピン人たちの同施設内での活動、さらに地域の人びと(在日コリアンなど)と関係を形成することである。特に、当該地域において、多文化交流サロンに集まるフィリピン人たちが関係を形成する、在日コリアンの文化表象を表現手段として開催され、多様なマイノリティが集まる「東九条マダン」や、多文化交流サロンで活動するカトリック教会を拠点とするフィリピン人グループなどとの関わりに注目した。 調査方法はフィールドワークによる参与観察、社会関係の構築過程を理解するためのインタビューなどを活用し、実施した。特に、平成29年度は、フィリピン人たちの動向だけではなく、本研究のテーマの中心である、フィリピン人から広がる関係への理解のため、フィリピン人たちも参加している「東九条マダン」、さらにその周囲の関連する関係について参与観察を実施した。この参与観察には研究協力者のベル裕紀氏にも参画してもらった。 今年度は「東九条マダン」に積極的に参加しているK保育園との関係づくりを試みた。K保育園は多文化交流サロンの系列であり、調査対象となるフィリピン系のこどもたちだけではなく、約5か国の海外ルーツをもったこどもたちが通い、多文化共生保育なども実施されている。 そこで、本研究では、社会関係構築の状況に焦点を当てる調査の一環として、11月中旬には、多文化交流サロンの秋まつりにおいて、韓国ソウルの現代の小中学生の生活を再現する企画「ソウルこども部屋」を実施した。単にフィリピン人同士の関係だけではなく、その周囲にある多様な関係に注目することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にすすんでいる。ほかにまた、多文化交流サロンで実施した企画「ソウルこども部屋」は、研究代表者の所属機関である国立民族学博物館の異文化交流パック「みんぱっく」の「ソウルスタイル」と「ソウルこどもの時間」を活用し、K保育園・多文化交流サロン・本研究の協働により実施できた。この企画にも、多くの在日コリアン、フィリピン人、地域の日本人が参加し、関係形成の場となった。本研究のテーマである日本人、在日コリアン、フィリピン人の関係だけではなく、地域を基盤とする多様なエスニシティ・ナショナリティ関係まで考察できる可能性を備えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本人、在日コリアン、フィリピン人の関係をフィリピン人からの関係の広がりからみる視点が重要であることは言うまでもない。さらにそれに加え、調査拠点である多文化交流サロンがカトリック系の社会福祉法人であるということも検討に含める必要があるだろう。2018年4月に刊行された『現代日本の宗教と多文化共生―移民と地域社会の関係性を探る』(高橋典史・白波瀬達也・星野壮 編、明石書店)7章「宗教関係施設を通じたフィリピン人移住者たちのネットワーク―京都市・希望の家を事例に」(永田貴聖担当)において論じたように宗教組織内部から外部に広がる「多文化」の広がりの一つとしても状況をみる必要がある。 さらに、平成29年度末に実施しつつあるが、海外における日本研究、フィリピン移民研究、在外コリアン研究などでの研究成果の公表を実施する必要とあわせて、特に東アジアにおける複数エスニシティ・ナショナリティ関係との比較が重要である。
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Causes of Carryover |
当初年度末に予定していた、すでに東九条地域の社会運動を研究している山本崇記氏(静岡大学准教授)、東九条マダンについて研究している山口健一氏(福山市立大学准教授)を交えた研究会の実施が日程調整の都合上延期となった。平成30年度の早い時期に早急に実施したい。
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Remarks |
本研究に関連する情報の一部が研究代表者のサイトに公開されている。
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Research Products
(5 results)