2017 Fiscal Year Research-status Report
中国における婚姻家族の紛争と裁判に関する比較法学的研究
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17K03313
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
李 妍淑 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 博士研究員 (90635129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 婚姻家族 / 家族規範 / 家事紛争 / 家事裁判 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中国法における家事紛争パターンの特徴とジェンダー構造を日本や台湾と比較検討していくための土台となる作業に取り組んだ。 具体的には関連資料を収集するとともに、国内で行われる学会等に参加して研究者や実務家と交流し、最近の家族法をめぐる立法や政策の動向、学界での議論状況、司法の面における執行状況等について知見を伺い、得られた知見を本研究の遂行に資するよう再構成することに努めた。それとともに、今後の研究計画をスムーズに進めていくための人的ネットワーク作りにも取り組んだ。参加した主な学会は、法社会学会(5月)、女性学会(6月)、ジェンダー法学会(12月)等である。なお、本年度は、予定した国外出張には行くことができなかったが、8月に所属大学に客員研究員として滞在した台湾の家族法学者である林秀雄教授を通じて、台湾の近年の家族法の立法や学界の実態と動向についてインタビューを行うとともに、台湾学界に関する専門的知識の提供を受けた。 収集する資料の対象は、関連書籍、機関誌掲載の論文、立法資料、法令集、裁判例、入手可能な内部資料(とくに中国)などがある。所属大学の附属図書館にない資料など入手できないものについては、他の研究機関へ複写を依頼し、国外の資料についても関連データベースなどを通じて情報の収集に努めた。 なお、妊娠・出産により研究活動に遅れが生じることも覚悟していたが、当初の予想よりも資料収集やインタビューがはかどったこともあり、今後の研究を進めていく上での環境整備については、必要な程度において整えることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「家族」、「社会」、「法」、「裁判」、「ジェンダー」など分野横断的な問題を扱うことから広範な領域にわたる資料収集を必要とするが、国内の各出版社によって刊行された書籍や機関誌(論文等)をはじめ、関連立法資料や裁判例などの収集を効率的に進めることができたため。また、学会等における意見交換や台湾の家族法研究者を通じてインタビューも行えたことから、次年度以降の研究をスムーズに進めていくための環境を整えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾の家事紛争に関する実態や裁判実務の展開状況を把握するために必要な資料収集とインタビューを行う。そして年度の中頃を目処に、収集した資料と調査結果の整理・分析を終え、台湾での調査と分析から得られた結果を含め本研究全体の中間発表として報告する機会を設ける。比較法学会とジェンダー法学会には継続して参加することで、会員とのいっそうの意見交換に努め、次年度の準備とする。 台湾は、家族司法領域において、東アジアのみならず世界でも先導的な取り組みをしていると知られており、それに関する資料(論文、関係法律のコンメンタールなどを含む)の収集を行い、分析に努める。具体的には、台湾のジェンダー法政策の制定において多大な貢献をしてきた法制史研究者である陳恵馨教授(国立政治大学)をはじめ、民事法専攻の林秀雄(輔仁大学)/黄詩淳(国立台湾大学)の各教授と元裁判官で現監察院委員である高鳳仙氏を訪問し、専門的知識の提供を受ける。また、その際にインタビューを行うべき対象となる裁判実務家や民間女性団体についての助言を仰ぎ、台湾での人的ネットワークの構築にも務める。 また、本研究全体の成果発表に向けた前段階として、申請者が所属する北海道大学基礎法学講座が主催する法理論研究会において成果を発表し意見交換を行う。その上で、中国・台湾法研究の第一人者である鈴木賢教授(明治大学)にレビューを受け、年度内に学会報告を行い研究全体のブラッシュアップに努める。年度末には、中国法学会家族法研究会に参加し報告を行えるよう、昨年度の調査で不足した資料の収集も行い、前年に構築した人的ネットワークの更なる発展に努める。 その他、初年度には妊娠・出産により行うことができなかった中国での調査も日程調整を進め行う予定である。調査対象は、研究者、実務家、裁判所、行政機関、当事者・被害者支援団体等とする。
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Research Products
(2 results)