2018 Fiscal Year Research-status Report
近代地域社会の人的ネットワークと紛争解決機能の形成に関する実証的研究
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17K03314
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
橋本 誠一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90208447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 紛争解決 / 人的ネットワーク / 地方名望家 / 代言人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「近代地域社会の人的ネットワークと紛争解決機能の形成に関する実証的研究」を課題として、近世から近代への過渡期(明治元年から明治10年代にかけて)に焦点を当て、近代国民国家における中央集権的司法制度の形成にともない、近世地域社会の紛争解決機能がいかに変容したのかを実証的に解明しようとするものである。 本課題を達成するため、本研究はとくに地方名望家と代言人(無免許代言人を含む)に着目した。そして、地方名望家については第一のフィールド(静岡県掛川市)を、代言人については第二のフィールド(神奈川県横浜市)を設定した。 当該年度(二年目)、第一のフィールドでは引き続き鷲山恭彦家文書の整理・保存作業を課題とし、ほぼ毎月1回の作業日を設定して、研究協力者の参加を得ながら、資料の現状記録(資料番号の付与、写真撮影)、中性紙封筒への封入、そして資料目録への入力を行った。その結果、これまで3500点余の目録入力を終えた(昨年度実績は2100点余)。その内容は、大区小区制下の戸長役場文書がその主なものであった。 しかし、残念ながら、本研究テーマに直接関係する資料群はいまだ発見できていない。引き続き調査を継続したい。 第二のフィールドは初年度未着手であったが、当該年度で大きく前進させることができた。すなわち、昨年11月から今年2月にかけて、神奈川県立公文書館寄託文書飯田家文書中の松尾治太郎関係資料約500点(撮影コマ数5600余)の撮影を終えた。松尾治太郎は明治10年代に無免許代言人として活動した人物で、同関係資料は無免許代言人の活動実態を示す資料として全国的にも貴重な資料群である。その資料撮影が完了したことで、第二フィールドは第一段階(基礎作業)を終え、第二段階(資料分析)に進むことが可能になった。ということで現在は資料の翻刻中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一のフィールドの資料調査は、研究協力者の支援を得て、予定通り毎月一回実施することができた。ただ、資料点数が厖大であることから、本研究テーマに直接関連する資料群をまだ発見できていないという課題が残る。この課題を解決するために、現在の資料調査を今後も着実に継続していきたいと考えている。 第二のフィールドでは、神奈川県立公文書館での資料撮影に集中的に取り組み、約5600コマの撮影を行うことができた。これらの資料群は本研究テーマにとって貴重な情報を数多く提供してくれるもので、これを分析していけば次年度中に一定の研究成果が得られるのではないかと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一のフィールドについては、前年度と同様に、引き続き毎月1回の資料調査を実施し、研究協力者の支援を得ながら現状記録と資料目録の作成を行っていく予定である。 第二のフィールドについては、松尾治太郎関係文書の翻刻作業を進めると同時に、それに関連する諸資料(所在地は神奈川県、東京都、北海道など)の調査を進めていく。そして、2019年度中にその成果を論文として執筆する計画である。
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