2019 Fiscal Year Annual Research Report
Re-evaluation of practical jurisprudence in early modern Japan
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17K03315
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神保 文夫 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20162828)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 江戸幕府法 / 裁判 / 法実務 / 実務法学 / 法技術 / 評定所留役 / 公事方御定書 / 寺社奉行所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は近世実務法学の具体相を史料に基づき実証的に解明することであり、研究計画の最終年度である今年度は、研究実施計画に従って初年度及び第2年度の調査で不備であった部分の補充的調査を中心とする史料蒐集を継続しつつ、これまでに蒐集した史料の整理分析を行った。今年度新たに蒐集することができた史料は、マイクロフィルムからの引伸印画が約600枚、画像デジタルデータの複製が約2000コマ、筆写によるものが400字詰原稿用紙約40枚、ほかに古書店を通じて購入した写本・版本類が50点余などに上る。これらの史料の整理分析を通じて、江戸時代における実務法学の形成・展開過程について新たな知見をいくつか得ることができ、一部を論考にまとめ公表した。その主なものは次の通りである。(1)江戸幕府中央の主要な法曹的吏員であり、近世実務法学の担い手として重要な評定所留役の活動について、その創置とされる貞享期前後から、組頭・本役・助という基本的な職階制が成立した宝暦期に至るまでの官制史を中心に検討した論文を公表し、評定所留役が一般行政部局から事実上独立した専門役人集団として形成され、公事方御定書の制定施行とかかわってその職制が整備され充実していった過程や、留役が寺社奉行所の裁判をも担うようになった経緯など、従来の研究では不明確であった多くの側面を明らかにした。(2)評定所留役・同書役の選任方法や、留役組頭江坂孫三郎が安永六年(1777)勘定吟味役に昇進した際に引き続き評定所兼務を命ぜられた経緯など、司法部局としての評定所にどのような人材が求められ、どのような手続で選任されたかを具体的に知ることができる新史料を見出した。(3)裁判用語の定義、訴訟手続、判例の抽象化・法規化など、実務法学の法知識・法技術のあり方を具体的に示す史料を新たに見出した。(2)及び(3)について、論考にまとめるべく準備中である。
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Research Products
(1 results)