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2017 Fiscal Year Research-status Report

Realizing Roberto Unger: The Institutionalist Approach to Critical Legal Studies

Research Project

Project/Area Number 17K03318
Research InstitutionSeikei University

Principal Investigator

吾妻 聡  成蹊大学, 法学部, 教授 (60437564)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsロベルト・アンガー / 批判法学制度派 / 制度の不確定性 / 障害法学 / 合理的配慮
Outline of Annual Research Achievements

吾妻 聡「批判法学制度派の課題:制度法経済学の祖としてのリアリズム法学への回帰-障害法学に供するために-(1)」を執筆した。本論文は,ロベルト・アンガーを主な論客とする批判法学制度派の課題を闡明することを通して,障害法学・障害法制における合理的配慮論を批判的・発展的に論じようとするものである。“合理的配慮”は,障害法が反差別法レジームにもたらした革新的かつ論争的な概念であるが,本稿(1)は,こうした合理的配慮の本質ないしは当該概念を法学的に分析することの真の意義を,アンガー法社会理論の視角から反差別法の理論蓄積を批判的に再構成しその限界を明らかにすることを通して,論究する。
本稿の論じるところ,反差別法理論・障害法理論の真の教訓は以下にある。すなわち第1に,反差別法理論・合理的配慮論の展開は,<社会の基本構造(制度と意識)の批判と変革こそが障害問題における根本課題である>という洞察を,実践(法的紛争・社会運動)を通して徐々に闡明して行く発展的な過程である。だが第2に,この過程は,同時に/にも関わらず,法理論を徹底的に社会理論・社会構造論へと接続・発展させて行くことに対する躊躇によって特徴付けられる過程でもあり,またそうした躊躇の所在を,理論が差別根絶に失敗し続けることを通して自ら鮮明化して行く過程でもある。批判法学制度派の視るところ,法理論のより革新的・根本的な(自己)発展を阻む要因-躊躇の所在-は,自然化された社会像(社会の基本構造には限られたオプションしかないという観念)及び制度構想力の枯渇である。ゆえに第3に,障害法学は,既存の法社会理論批判をさらに深め,そして,-例えば,市場の既存構造を前提とした費用便益分析の地平に留まることなく-ありうべき組織構造論・市場構造論をより積極的に論じることができる知識(制度構想論としての障害法学)へと発展して行かねばならない。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実績の概要に記した通り,批判法学の知見をロベルト・アンガーの視角から再構成してこれを障害法学・反差別法理論の分野に応用する論文の執筆・公表がなされた。<アンガー理論の精神を現実化を目指す>という本研究プロジェクトを進めて行くにあたり,抽象的で難解なアンガーの法理論を具体的な文脈に適用することを通して更に精確に理解し論証するという重要なステップをクリアすることができたように思われる。またこの作業を通して,アンガー流批判法学(批判法学制度派)の有用性・意義を筆者の問題意識に沿って示すことができたように思われる。
加えて,アンガーの法社会理論の意義をより闡明するためには彼の社会理論・社会構造論を精確に読解してパレフレイズする必要があるが,アンガーの構造論の研究も適切に進展しており,29年度後半の研究成果は30年度の前半で公表される予定である(吾妻 聡「Roberto Ungerの構造論についてのノート」)。今ひとつの重要課題は,リアリズム法学の真の教訓を明らかにし,かつアンガー理論の限界-コストに対する鋭敏な感覚の欠如など-の所在を明らかにすることにあるが,これについては目下のところ端緒についたばかりであり,「当初の計画以上に進んでいる」ということはできない。
以上,研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価することができると思われる。引き続き当初計画に沿って研究を遂行して行く所存であります。

Strategy for Future Research Activity

1. ロベルト・アンガーの法学も含めた,20・21世紀の進歩主義的法学の発展を促すために,進歩主義的傾向のアメリカにおける祖先-リアリズム法学-についての基礎理論的研究を進め,これを論文「リアリズム法学の系譜について」としてまとめる。ホーフェルド,ヘイル,コーエンらの市場の法構造に関する批判的分析とその真髄-制度の不確定性論-が,後の法学にどうのように引き継がれたのか,あるいは引き継がれなかったのかを論じることが1つの焦点となる。
2.ロベルト・アンガーの理論の困難・限界についての研究を深め,論文「ロベルト・アンガーの法理論の再構成」を執筆する。私の理解によれば,アンガー理論に欠けている最も重要な概念の1つが“コスト”である。それゆえ,1980年代以降のアメリカ法学の学派間対立(批判法学 vs. 法と経済学)に囚われることなく,法と経済学その他の法学上の諸傾向に対して適切な敬意を払いながら研究を進めて行く。その中でも特に,20世紀初頭の制度派経済学の影響を受けた理論傾向に注目しつつ,アンガーの制度構想の法学を制度法経済学へと発展させる可能性を模索する。
3.ロベルト・アンガーの哲学的バックグラウンド(“脱自然化されたプラグマティズム”)についての研究を他のプラグマティストたちの思想傾向との比較を通して行い,「ロベルト・アンガーのプラグマティズムあるいは民主的実験主義」をテーマとする論文を執筆する。直接的な源流としては,パース,デューイらアメリカのプラグマティストたちの思想との比較を通して,より今日的文脈においては,リチャード・ポズナーの言うプラグマティズムやアンガーにも影響を受けている若手の民主的実験主義者たちのプラグマティズム,あるいはローティやダンカン・ケネディの思想傾向(アイロニー)との比較を通して,アンガーのプラグマティズムの特徴を明らかにする研究を進める。

Causes of Carryover

本年度は当初計上していた旅費の支出等がなかったために次年度使用額が生じた。30年度は,研究成果の報告・研究会の計画を組み直して,計上に沿った予算執行を行う所存である。
必要物品費(書籍その他)については,基本的には29年度と同様に順調に執行を行っていく予定であるが,大型の書籍などの購入を行うことを通して,研究資料の更なる充実化を図る。
だが,全体としては順調な予算執行が行われたと考える。研究プロジェクトの2年目となる本年度は,内外の研究会・学会に参加し,またはこれらを主催して計上に沿った予算執行を行い,より効果的な研究遂行に努める所存である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Open Access: 2 results)

  • [Journal Article] 障害とは何か,障害者とは誰か2018

    • Author(s)
      吾妻 聡
    • Journal Title

      平成29年度 障がい者の消費行動と消費者トラブルに関する調査 報告書

      Volume: N/A Pages: 6-14

    • Open Access
  • [Journal Article] 批判法学制度派の課題:制度法経済学の祖としてのリアリズム法学への回帰-障害法学に供するために-2017

    • Author(s)
      吾妻 聡
    • Journal Title

      成蹊法学

      Volume: 87 Pages: 1-49

    • Open Access

URL: 

Published: 2018-12-17  

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