• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2018 Fiscal Year Research-status Report

Realizing Roberto Unger: The Institutionalist Approach to Critical Legal Studies

Research Project

Project/Area Number 17K03318
Research InstitutionSeikei University

Principal Investigator

吾妻 聡  成蹊大学, 法学部, 教授 (60437564)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsロベルト・アンガー / 批判法学制度派 / 制度の不確定性 / リーガル・リアリズム
Outline of Annual Research Achievements

1. 吾妻 聡「Roberto Ungerの構造論についてのノート」を執筆した。本論文は,批判法学制度派ロベルト・アンガーの法社会理論についての理解を深めるために不可欠となる,形成的構造(formative context)・否定的創造力(negative capability)などの主要概念の意義を,社会理論の根本テーマの1つである<構造(structure)/主体(agency)論>と関連づけながら明らかにしようとしたものである。本稿のアンガー理論読解・概念整理によれば,批判法学制度派は,(1)社会構造論については,法学が得意とする制度のミクロ分析に基づいた<多元的構造論>を採用しつつ,(2)人間主体論については,<人工物としての社会>という社会理論上の観念が発展を促してきた,法律家の<否定的創造力>ないしは<制度的構想力>の重要性を論じながら,社会理論の決定論的思考様式・法理論の自然主義的思考様式から決別した独自の社会変革理論を提出しようとするものである。
2. 吾妻 聡「リーガル・リアリズムの精髄についての諸論考の考察」を執筆した。本論文は,批判法学制度派の課題及び知的文脈をさらに明らかにするために,20世紀後半に登場した法と社会運動・批判法学・法と経済学らアメリカ法学の諸学派すべての原点であるリーガル・リアリズムについて,その真髄がどこにあったのかを論じる近年の諸論考を,本研究の問題関心から再構成した上で紹介するものである。本稿は,法理の不確定性論から法関係の不確定性論,そして法制度の不確定性論さらには社会の基本構造の不確定性論へといたるリアリズム的法学研究の課題を後付け,こうした,法理・法関係・法制度の不確定性についての具体的な分析の成果を社会の基本制度の構想論へと活用する知的プロジェクトを胚胎していたところに,リアリズムの真髄があったことを示唆するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実績の概要に記した通り,批判法学の知見と方法論をロベルト・アンガーの問題意識から再構成して提示する“批判法学制度派”の立場をより明らかにするための論攷を執筆・公表することができた。第1論文は,アンガーの法社会理論の最も重要な・だが非常に晦渋な概念をよりわかりやすく解説することを通して,批判法学制度派の意義を述べたものである。第2の論文は,批判法学の知的水脈を遡って,アンガーのみならず多くの批判法学の論者たちの,より大きくは現代アメリカ法学それ自体の水源であるリーガル・リアリズムの真髄を改めて論じることを通して,これを受け継ごうとする批判法学制度派の今日的課題と可能性を論じたものである。
ことに第2論文は,前年度報告書の「今後の研究の推進方策」において,「20・21世紀の進歩主義的法学の発展を促すために・・・リアリズム法学・・・についての基礎理論的研究をすすめ[る]」と述べた研究課題を遂行したものである。また第1論文は,批判法学制度派の基底にあるアンガーの脱自然化された社会構造論(人間主体と社会構造の関係についての思想・理論)をよりわかりやすいかたちで提示しようとしたものであるという意味で,やや角度を変えてではあるが,同「今後の研究の推進方策」における「アンガーの哲学的バックグランド・・・についての研究」に関わる論文であるということができる。
以上から「本研究プロジェクトは研究計画に沿って概ね順調に進展している」と自己評価することができると思われる。引き続き,当初計画に沿って研究を遂行して行く所存であります。

Strategy for Future Research Activity

1.リーガル・リアリズムの代表的論客(ホーフェルド,ヘイル,コーエンら)の洞察と同時代の制度派経済学(ヴェブレン・コモンズ・ミッチェルら)の洞察を再度結びつけ,制度派法経済学の祖としてのリーガル・リアリズムの意義をより明確に論じる「批判法学制度派の系譜:制度派法経済学の祖としてのリーガル・リアリズムの意義(仮)」を執筆する。
2.本研究の理解によれば,アンガー理論に欠けている最も重要な概念の1つが”コスト”である。この欠缺を補うために,1980年代以降のアメリカ法学の学派間の対立(批判法学 vs. 法と経済学 vs. 法と社会運動)に囚われることなく,リーガル・リアリズムの嫡子を自認する多くの立場に,とくに法と経済学・法社会学の制度分析に引き続き適切な敬意を払いながら研究を進め,論文「批判法学の制度論的転回(仮)」を執筆する。
3.以上ような理論研究がより具体的にはどのような政策論・制度論に結びつきうるかを明らかにするために,これを障害分野に改めて適用する論文「障害法学と批判法学の交渉:合理的配慮法制の意義について(仮)」を執筆する予定である。
4.加えて,アンガーの書籍『批判法学運動』の翻訳作業を遂行中である。

Causes of Carryover

本年度も当初計画していた旅費の執行を行うことができなかったので,次年度使用額が生じた。31年度は,批判法学・基礎法学に共通の関心をもつ研究者との研究成果報告会・研究会を複数回行い,旅費および研究会謝礼等を確実に執行する所存である。
必要物品費(書籍その他)については,基本的には29年度・30年度と同様に順調に執行を行っていく予定である。
ただ,全体としては順調な予算執行・研究遂行がなされたと考える。引き続き,適正な予算執行・確実な研究遂行に努めて行く所存であります。

  • Research Products

    (4 results)

All 2019 2018

All Journal Article (4 results) (of which Open Access: 2 results)

  • [Journal Article] リーガル・リアリズムの精髄についての諸論攷の考察2019

    • Author(s)
      吾妻 聡
    • Journal Title

      法と社会研究

      Volume: 4 Pages: 1-20

  • [Journal Article] 障がい者の消費行動と消費者トラブル事例集:本調査に寄せて(法社会学者からみた調査の意義)2019

    • Author(s)
      吾妻 聡
    • Journal Title

      『障がい者の消費行動と消費者トラブル事例集』

      Volume: N/A Pages: 4-13

    • Open Access
  • [Journal Article] 書評 江口厚仁 他 編『境界線上の法/主体―屈託のある正義へ―』2019

    • Author(s)
      吾妻 聡
    • Journal Title

      法社会学

      Volume: 85 Pages: 234-247

  • [Journal Article] Roberto Ungerの構造論についてのノート2018

    • Author(s)
      吾妻 聡
    • Journal Title

      成蹊法学

      Volume: 88 Pages: 97-145

    • Open Access

URL: 

Published: 2019-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi